ハマジン

大菩薩峠のハマジンのレビュー・感想・評価

大菩薩峠(1960年製作の映画)
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開始早々無実の老人をいきなり背中から斬りつける外道、机竜之助(市川雷蔵)。血を拭いパッと放った懐紙が、孫娘が水を汲む川にハラハラと舞い落ちる。次いで夫の命乞いに来た妻お浜(中村玉緒)を水車小屋で手籠めにし、夫も試合で打ち殺す鬼畜ぶり。水車の軸に絡まりだらりと垂れ落ちるお浜の帯の、なまめかしさと残酷。業と恨みを爛々と眼に宿す中村玉緒、雪の林の中追いかけられた挙句竜之介の刀に突き刺され、地面をごろごろ転がってこと切れる末路のカットが百億点満点。

撮影・今井ひろし、照明・岡本健一、美術・内藤昭、一流の技量がガッチリ嚙み合ってこそ成立した、墨絵のような幽玄な空間の数々。終盤、霊の気配があたりを漂う中、気の触れた竜之介が襖と簾を斬りまくるシーンはもはやホラー。
終幕、頭痛と幻聴に苛まれる雷蔵の虚けた表情。それまでの狂乱の風体が、いざ決闘に入るとスッ…と"音無しの構え"の安定した姿勢に戻るところが凄絶。竜之介の側が刀の妖力に操られ、木偶のように動かされているようにしか見えない。
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