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大菩薩峠のcatmanのレビュー・感想・評価

大菩薩峠(1960年製作の映画)
4.0
1960年公開。初見。三隅研次監督による拘りまくったライティングとアングル、効果的なズームや移動カメラによる画力たっぷりの撮影に痺れる。虚無で孤独な主人公は、雷蔵らしい大袈裟な(クサい)くらいニヒルな芝居と厚塗りメイクとが相俟って眠狂四郎のプロトタイプの様。ただしこちらはダークヒーローと言うよりはサイコパスかってくらい血も涙も無い無慈悲なシリアルキラー。幕明け早々、峠で偶々すれ違った巡礼中の老人に声を掛けると出し抜けに辻斬りしてしまうので呆気に取られる。自身の業の深さに苦悶する様子がいちおう描かれはするものの、そのバックグラウンドが何も語られないため、このぐう畜に肩入れする余地は殆ど無い。ファムファタール役の中村玉緒は鬼気迫る演技が印象的で、彼女を良い役者だと思えたのはこれが初めて。物語がクライマックスを迎え、緊張感が頂点に達した途端に『つづく』と幕を切られて愕然とする。え!ここで終わるなんてマジかよ〜涙
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