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大菩薩峠のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

大菩薩峠(1960年製作の映画)
3.5
『大菩薩峠』
1960(昭和35年)大映

中里介山原作の大長編小説の映画化。

中里介山は、1885年(明治18年)羽村市生まれ。父親が家業の農業から離れ貧しい子供時代だった。電話交換手や代用教員で一家を支えた。東西の古典を読みキリスト教、社会主義を学んだ。幸徳秋水や堺利彦、内村鑑三と親交を結んだ。

介山が社会主義から距離をとり始めたころ大逆事件(1910年・明治43年)が起きた。警察や政府がでっち上げた天皇暗殺未遂事件。嘘の容疑や「知り合いだった」というだけで社会主義者がたくさん逮捕され死刑にされた。

この事件は介山に大きな影響を与えたらしい。

原作は1913年から1921年で一旦連載がら終わり4年後に再開される。

再開された後は主人公達はあまり出てこなくなったりしていく。幕末の設定なのに明治維新は起きずにいつまでも江戸時代のまま。果てしない放浪の話が続いて作者介山がなくなって未完のまま。

大映が映画にしたのは1921年までの部分。

甲州の大菩薩峠て巡礼の老人が斬り殺される。辻斬りを行ったのは浪人・机竜之助(市川雷蔵)。

父親(笠智衆)から剣術を学んだが「お前の剣は弱くなっている。正しい剣の道から外れている」と非難される。

剣の道で仕官するでもなくブラブラして辻斬りをしている。

殿様の前での御前試合が近付き対戦相手の宇津木文之氶の妻・お浜(中村玉緒)が竜之助を訪ねてくる。仕官が決まっている文之氶を倒さないでほしいと頼む。断った竜之助は密かにお浜を拉致して強姦する。強姦した代わりに試合に負けてやるかと思ったら竜之助は、一撃で文之氶を叩き殺す。

お浜を連れて江戸へ逃れた竜之助。子供が生まれたが裏長屋でブラブラしている。後に新選組になる新徴組から金をもらって暮らしている。

言い争いになったお浜を切り殺す。兄の仇を打つ為竜之助を追ってきた宇津木兵馬か迫る。

今で切り殺した被害者の亡霊を幻視して錯乱する竜之助。さて二人の対決は、、、

・三隅研次はシャープな構図と明暗を巧みに使って(撮影:今井ひろし)ダークヒーローの物語を印象的に描いている。竜之助の顔が陰になり刀だけか浮き上がる構図の見事さ。
・竜之助が真っ暗な長屋に帰宅して行灯に火を入れて竜之助の顔が浮かび上がる場面の美しさ。
・亡霊を幻視して錯乱して御簾を切り裂く竜之助。場面設定の見事さ。

三隅研次監督の美学か冴える。
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