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PITY ある不幸な男のmのレビュー・感想・評価

PITY ある不幸な男(2018年製作の映画)
3.5
愛おしい。今作の主人公が愛おしくて堪らない。誰の心にもある隙間を丹念に描いていて好きだった。

『ロブスター』『籠の中の乙女』の脚本家エフティミス・フィリップさんがまたやってくれた!笑
監督がヨルゴス・ランティモスさんじゃないのでそこまで尖っているかと言われたらそうでもないが、でもエフティミス・フィリップさんの奇天烈感が感じられて楽しかった。

風邪を引いた次の日に学校に行くと、誰かに心配されたり、体育で少し怪我をしたらみんなが周りに集まってきた。それを思い出したら、なんか今作の主人公(ヤニス・ドラコプロスさん)が可愛らしく見えて。昏睡状態だった妻が目を覚ました後に、みんなから心配されているのをジッと羨望の眼差しで見つめるのが共感出来てしまって…。

承認欲求が強い人が突然不幸になるとこうなるのか、というサイコスリラーの入門編みたいな今作。
美しい画の中で徐々に狂っていく主人公の弁護士に私は共感出来たし、少なくともこういう人がいるんだなぁ、私だけじゃないんだと思えた。

ラストの仕業は少しやり過ぎというか、そうなるだろうな、という予想ができたのでもう少し斜め上の出来事が欲しかったかな。
病院徘徊して、知らぬ人……(ネタバレ回避)にしたことは狂気的でよかった。

不幸の中の幸福。誰の心の中にもある欲求を見事に昇華していたと思う。
嘘つかれた方(クリーニング屋の店主激おこやった笑)は溜まったもんじゃないけどね。

追伸
ここのレビューで「代理ミュンヒハウゼン症候群では?」ってあるけど代理は《子ども》を故意に傷つけて同情を買うものだから違うと思う。
ミュンヒハウゼン症候群の要素はあるものの、代理ミュンヒハウゼン症候群ではない。

cc/血も涙も枯れ果てた、そして──
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