TaiRa

ラストナイト・イン・ソーホーのTaiRaのレビュー・感想・評価

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エドガー・ライトが向いてるのはこういうんじゃないでしょ。

まずアイディア段階で上手くまとまってないので、脚本が下手。過去に惹かれるあまり、その時代へ意識が飛んでしまう話なら、その過去は魅力的な世界の方が良い。『異人たちとの夏』みたいに過去に吸い寄せられる=死者に近付く話なら成立する訳だが、今作の過去は地獄巡りの要素が大きい。それでも尚、過去に飛ぶなら目的が提示されるべきだが、それが不明瞭。情報の出す順番も良くない。過去の悲劇を現代から救う話なら、それこそ『君の名は。』みたいに過去に介在出来ないと意味ない。タランティーノがやったようなフィクションで過去を救うパターンでも良いが、その手法は取らない。その上で歴史上の搾取されて来た女性たちへのレクイエムを作るならまた別の方法が必要。形だけ真似するジャッロ風味は作劇に効果的じゃない。切り裂きジャックみたいに女性を狙った殺人鬼が今でも暗躍している、という設定ならある種の「解決」も提示出来るがそれもない。なのであまりミスリードも効いてない。主人公の霊視が信用出来ないバランスなら心理ホラーにもなるが、その不確定さは示さない。観客には割と無条件で主人公を信用させてる。ポランスキーや『PERFECT BLUE』の影響を感じつつも、その類の面白さは得られてない。『恐怖の足跡』みたいな霊視描写もパッとせず、盛り上がるポイントが作れない。ライトが本当にやりたかったであろう上京青春モノとシスターフッド映画のカタルシスも、積み上げて来たドラマが散漫なので上手く行ってるとは思えない。やりたい事とやれる事、やるべき事のバランスが取れずに終わってる。一番怖い場面が序盤の「おじさんがストーカー第一号になっちゃおうかなぁ〜」なので、そこ広げちゃった方がまだ面白かった。
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