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ラストナイト・イン・ソーホーのsheepmanのレビュー・感想・評価

4.3
「昔は良かった」という懐古主義に終始し、ただ閉塞的なその世界へと耽溺するだけではなく、過去(60年代)のショービズ界に確かに存在していた、権力側が夢を追う若い女性を(時に性的に)搾取するという醜悪な構図から決して目を背けずに、サイコスリラーという形を取りながらその恐怖を正面から描いている。ホラー映画としてもしっかり怖かった。
映画や音楽もそうだが、昔のカルチャーに触れる時にはどうしてもそういった搾取的な構図に思いを巡らせてしまい、アンビバレントな気持ちを抱いてしまう昨今(多分エドガー・ライトもそうだったんだろう)ではあるが、この映画はそれに対してひとつの答えを示そうともがいているように思えた。metooのムーブメント以降は状況も少しは変わったのかもしれないが今でも搾取的な構図は存在するんだろう。まるでアパートに閉じ込められたゾンビ野郎共みたいな奴らが。。
音楽の使い方やアクションとの絡め方が素晴らしいのは言わずもがな。エドガー・ライト、本当に音楽オタクなんだと思う。部屋に隣の建物のネオンの光が入るシーンはヒッチコックの映画で見たことがあるような……と思ってニヤリとした。
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