青春映画の装いでレトロホラータイムトラベルミュージカル映画をスタイリッシュに撮った映画は見たことがなかった。
序盤からのカットの流れ・照明使いの美しさ、さすがエドガーライト、お見事。
わずか5分弱の間に60年代に憧れたファッションデザイナーの卵ということを説明し切る。
衣装もパッチワークのような新聞紙の装いから自作の服→憧れの服へと装いを変化させていく。
ただ、アイデア先行でホラーに寄せていった感は否めず、あれだけトラウマ級の体験をしても、主人公の作風に変化がなかったのは残念だった。
美しさや憧れだけが「レトロ」じゃない。そこには夢が叶わなかった人たちも多くいる。薬中になったり自殺する踊り子の描写がありながら、恐怖映像→怖い→主人公逃げる→でもやっぱり60s最高!→大団円になっており、主人公の本質は何も変わっておらず残念。もっと大きなテーマを扱えたはずで口惜しい。
「ミッドナイトインパリ」ではその点、作品が影響し合うするので、読後感が気持ちいい。
ホラーによって映像刺激の強さはあるが、レトロポップとの噛み合わせが若干悪い。
効果音で煽りに煽ってくるのが人為的で逆に興ざめなのは昨今のホラー映画の悪癖。音で効果的なように見えるが、いきなり鳴る大きな音に驚いているだけで、本質的には恐怖していない。死んだ男優の群れが洋製汁男優のようで笑ってしまった。
彼氏に黒人が起用されていたり、色んなところに気を遣ったポリコレ映画に見えてしまうのは自分に邪念があるからか。
ただ、60年代風の紳士なオールバック男性に憧れながら、趣味もおそらく合っていないドレッドヘアーのガラシャツ男性に落ち着くのはいくら優しいとはいえ違和感がある。
とはいえ、ダンスシーンのカタルシス・カットバックの小気味良さ・Jカット、マッチカット、エドガーライト節全開でそれだけでも見た甲斐があった。