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ラストナイト・イン・ソーホーのniのレビュー・感想・評価

4.8
気になっていたから公開日に!シスターフッドをもっと描いて欲しかった気はするけど、フェミニズム映画であることは変わらないと思う。それと単純に映画として面白かった。



以下ネタバレを含むダラダラとした感想と考察


この映画のジャンルを定義するならホラーだし、観ていて怖かったのだけど、ベースにあるのは一般的なホラー映画に登場するような恐怖ではなくて、じゃなくてサンディの悲しみと怒り、そして男に対する恐怖だったと思う。
最初に幸せそうで、美しくて、完璧に見えていたサンディが、男に騙されて、搾取されていくのはとても悲しかった。この時の男に対するトラウマが、長年経っても、死ぬまで無くならなかったことは、部屋をエロイーズに貸すことになった時に「夜8時以降は男を呼んじゃだめ」と伝えたことからも読み取れる。
最初にシスターフッドを描いて欲しかったと書いたけど、最後にエロイーズ(以下エリー)がサンディを殺さない選択をしたのはすごく良かった。サンディが、自分を性的に搾取した男たちを殺したことは、そうでもしなければそこから抜け出せなかったと考えたら、確かに殺人は許されないけど、何だか許せてしまう、同情せざるを得ないところがあったし、エリーが彼女を最後殺さなかったのはそういう理由だと思う。最後にサンディがエリーにあなたとボーイフレンドは逃げて、生きなさい。みたいなことを言うのがすごく良かった。でもその前にエリーまでを殺そうとしたことから、もしかしたらエリーの母親もサンディに殺されたのかもしれないっていう友達の考察が鋭すぎるんだけど、本当にそうだったのかもしれない。もうちょっと記憶があやふやだけど、サンディ(大家)が自分の秘密を知った人は殺してきたみたいなことを言っていたことと、エリーもサンディの過去を知ることによって病んでいっていたし、彼女の母親も精神的に病んでいたということが予測されるし、エリーは自殺と思われてもおかしくないとサンディに言われてことから、確かにそうなのでは?と思った。

ソーホーに行ってみたくなったし、60年代のファッションがとても好きだった。
エリーのルームメイトが田舎者だとエリーを虐めてきたのは、そんなこと普通起きないでしょ、と突っ込みたくなる現実味の無さだったことなんかから良くも悪くも「男性監督が作ったフェミニズム映画」とは思えてしまうけれど、総じて良い作品だったと思う。

エリーがソーホーに来て乗ったタクシー運転手が彼女が田舎から来たと分かったら気持ち悪いことを言ってきたのとか、サンディを性的に搾取した男性の悪さがきちんと描かれていたこととかは、男性監督が作ったのにすごい、と感動させられた。この辺は少しPYWとも似てくるけど、女は男の道具じゃないし、無下に扱われるはずの対象でもない。無下に扱おうとしてくる男たちに制裁を加えるっていう点は、PYWもこの作品も全く同じだけど、この作品はそんな男らを殺してしまったのに対し、PYWは言葉で、非暴力的な方法で制裁を加えていた、つまり女性に非を作らなかったのが、やっぱりPYWは素晴らしいと感じてしまう。舞台となる時代が違うから一概には比べられないけど。あとこういう搾取された側を描くことはまた彼女たちをエンタメで消費してしまうような気がして、やっぱり難しい。その辺やっぱPYWはすごい。。この作品は少し‘’消費”を感じてしまったな。
レミニセンスのメイとサンディも似ていると思う。今年は、男に搾取、暴力されてきた女性を描いた作品がやっぱり多かったな感じる。そんな作品を作らなければ沢山作られるぐらい、やっぱりまだまだ、世界的に、女というだけで搾取、暴力される可能性が高い社会ということだよね…。今16の私が死ぬであろう70~80年後には、何この2020年代の作品、昔の女の人可哀想、こんな時代もあったんだやばwとなる社会であっていて欲しいものです。
でもこのサイトで、他の人の感想を少し眺めるだけでも、「オシャレで素敵だった!」とか「ホラーとしてはあんまり怖くないけど面白かった!」みたいなあんまり監督が伝えたかったことが伝わってなさそうな感じの感想が8割で失望しちゃう😅

あまり前情報を入れなかっただけあって、最初が現代だったり、題材が社会派だったりとびっくりさせられたので、前情報を入れずに観た方が楽しめると思う。作品の雰囲気、ファッション共に好みだった。題材も良いし。今年のベスト5には確実に入る、傑作。上映中にもう一度観に行きたい。
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