くもすけ

ラストナイト・イン・ソーホーのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

60年代スウィンギン・ロンドンを溺愛する少女が、当時から残るソーホー地区のアパートで毎晩悪夢を見て、歌手を夢見た娘の殺人事件を調べ始めるのだが。。という話。

今回はいつにもましてびっくり演出が多くて、見た目に画面がちらちらするのだが(映画上映前にちらつき警告が出る)、実は話のほうはあんまり派手な展開はなく一本調子。

主演の少女エロイーズ(エリー)は、母親を自殺でなくして祖母に育てられた田舎娘。彼女の故郷コーンウォールは連合国最西南端で6つのケルト地域のうちの一つ。かつてコーンウォール語という言葉が話されており(20世紀初頭に母語話者が絶滅)、コーンウォール人Cornishと呼ばれる。エリーもそのもそもそしたしゃべりかたが特徴的で、ぶっきらぼうな都市の言葉と対照的。

エリーは母親の幻影を常日頃見る異常体質だが、祖母公認で本人もとくにそのことに葛藤がない。ファッションを勉強するためにロンドンのカレッジに入学するも、同居人や街の喧騒に馴染めず、さっさと寮を引き払ってソーホー地区で下宿生活を始める。その夜、眠りにつくと60年代にタイムスリップしてしまう。自分と同年齢のサンディ(アレクサンドラ)に憑依し、歌手を夢見るサンディがナイトクラブ「カフェドパリ」でデビューを勝ち取ろうとピンプのジャックに売り込みを始めるが、。

というわけで、エリーとサンディ以外ほぼ無関係な話。
頻繁に電話をするトゥシンハムおばあちゃんも、心配するばかりでエリーの状況説明に使われるだけ。「ナック」で、「蜜の味」で、口やかましく男を圧倒した彼女の口から、エリーの母親について語られるとばかり思っていたのに。

霊が見える理由がケルトなのか自殺なのか天然なのかわからんが、この超能力を都合よく使いすぎなきもする。

で彼女のひとり相撲の最後を飾るサンディの正体は、それほど意外なものではないだろう。重要なのはその後。
目まぐるしい展開のクライマックスだが、あくまで言葉での応酬に興ざめしてしまう。またそれまでの地獄絵図をひきうけたというより居直りのようにもみえるラストの発表会のあと、鏡の中でのサンディとの対面で、彼女はいったい何を思うのか

スタンプやトゥシンハム、ダイアナ・リグ(これが遺作)を連れてきたのは、あの時代をなぞるためだろうが、どの作品をイメージしていたのだろう。公開されている15本のリストを見る限り、もっと別モンになるような、。サンディの元ネタは、案外「天使の復讐」あたりなのでは