プリオ

ラストナイト・イン・ソーホーのプリオのレビュー・感想・評価

5.0
アニャテイラージョイに絶賛ハマり中にみた映画だ。アニャちゃんの可愛さはもちろん際立っていたが、主役の女の子も良かった。

ダブルヒロインで物語が進んでいくスタイルが斬新。タイムリープモノは異性を助け出すのが鉄板だと思うが、今作では同性なのだ。現在を生きる学生の女の子が、寝ることで1960年代のロンドンにタイムスリップする。悲惨な運命を辿り出す女の子を助けようと、過去と現在を行き来するストーリーだ。  


<よかった点>
○可愛い2人の女の子が、怖くてオシャレなロンドンで懸命に生きる姿をみることができる。


○映画の雰囲気、音楽、セット、衣装、カメラワークなど、全てにおいてクオリティーが高い。非常に上質なホラーサスペンス映画になっている。

僕はおしゃれで上品なサスペンス映画が大好きだ。例えば、「シックスセンス」、「アザーズ」、「ゲットアウト」、「アス」、「ゴーンガール」、「セブン」など。

チープで、ノリでつくってみました系のサスペンス映画を山ほど見てきた自分としては、栄養素高めで堪能しがいのあるサスペンス映画に出会えた時の喜びは大きい。


○ホラーテイストも程よく入っていて、丁度いい。

あまりに酷すぎたり、おどかすシーンが多いと冷める。これも、好みの変化だが、昔はグロければグロいほどいい自分がいた。もっと、残酷な描写を見たい。こんな酷いことフィクションで描けるんだ。こんな殺し方あるんだ。色んな意味で好奇心をくすぐられた。例えば、「テキサスチェーンソー」、「ソウ」、「ホステル」、「ミスミソウ」、「冷たい熱帯魚」など。視覚的な刺激が強いので、インパクトがあるし、すごいものを見たという余韻も残る。

だが、そういう類のものをある程度見ると、飽きがくるのか自然と求めなくなった。それに人が思いつくグロさにもある程度上限があることにも気づいた。逆に、なんか「良い違和感」のあるホラーには無限の可能性があると思うのだ。

ホラー映画において、激しい残酷描写をなしで、インパクトを残すには、今まで見たことのないようなものを描く必要がある。そこでカギになるのが、サカナクションの山口一郎が音楽に求める「良い違和感」というものだと思う。僕は映画にも「良い違和感」を求めている。真っ直ぐすぎる映画もいいが、どこか変なことをしている映画の方が魅力を感じてしまうのだ。  


○女の子が自分らしく生きていく応援的な映画でもある。

イギリスの田舎からロンドンの服飾の学校にやってきた主人公。周りは1960年代のファッション好きな主人公をバカにする。周りには最新のブランドを着飾り、クラブで男たちと遊ぶ。それが、かっこいいとされている生き方。世間体。権力者によって作り出された虚構。そこには、資本主義、政府、宗教、科学などが絡んでくる。文化とは作られたモノ。今の文化、流行っているものは、誰かによって意図して作られたモノという見方もできてしまう。そんな世界で、主人公が自分のオリジナルで戦っていく姿には、胸が熱くなるし、自分もそうありたいと思った。


○映画として、こんな気持ちのいい終わり方はない。エロイーズが自分らしさ(オリジナル)を獲得し、表現する姿はとにかく美しかった。これからも、サンディが後ろから背中を押してくれることだろう。

余談だが、学校の授業、テレビ、本で知識を吸収するより、効果的に知恵が定着する方法は、人から教えてもらうことだ。それも気心知れた仲であるほどいい気がする。テレビで見た情報は1日で忘れてしまうこともあるが、人から教えてもらったことは一生モノになる。さらに深く植え付ける(インセプション)には、すぐに実行することだ。教えてもらってその日のうちにやる。この即時性の効果は絶大である。物事が面白いように進むようになる。


<どんな映画と似ているか>
「ミッドナイトスワン」を見終わった感覚と近い。マイノリティーが生きづらい世の中で、主人公は自分らしく力強く生きていくのだ。自分の好きなもの、本当の姿を隠して生きていると、いつかおかしくなる。そんな悲劇を迎えないためにも、自分を何よりも大切にして、愛してあげよう。
プリオ

プリオ