エイデン

ラストナイト・イン・ソーホーのエイデンのレビュー・感想・評価

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コーンウォール
他人に見えないものを感じたり見たりする不思議な能力を持つ少女エロイーズ(エリー)は、死んだ母の代わりに育ててくれた祖母の影響で60年代の文化に関心を持ち、ファッションデザイナーになる夢を持っていた
ある日 エリーは、ロンドンにあるファッション専門学校“ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション”への入学が決まり大喜び
心配する祖母から若い頃の母と祖母が映る写真を渡され、ずっと自分を見守っている死んだ母の幻影に別れを告げると、興奮した面持ちでロンドンへと旅立つ
しばらくして、ソーホー地区にある学生寮に到着したエリーだったが、故郷とは違った価値観や文化に圧倒されてしまう
ルームメイトで自信家のジョカスタとも知り合い、他の新入生達と飲みに出かけることになったエリーは、下町のパブ“トゥーカン”を訪れる
なかなか雰囲気に馴染めずにいたエリーがトイレにこもっていると、そこでジョカスタらが先ほど話した自殺した母の話題まで取り上げて自分を馬鹿にしているのを耳にしてしまう
そっと抜け出して自室まで帰ったエリーだったが、そこにもジョカスタが男を連れ込み始める
仕方なく寮の共有スペースにやって来たエリーだが、そこも新入生達が大騒ぎしており、唯一親しげに話してくれたのはジョンという男子生徒だけ
そのまま寝落ちしたエリーは、翌日 早速遅刻してしまい、クラスでも浮いた存在になってしまう
電話をくれた祖母には順調だと説明するも、さすがにいたたまれなくなったエリーだったが、偶然 女性限定のワンルームで入居者募集をしているメモを発見
早速 メモに記されたソーホー地区の一角“グージ・プレイス8番”に向かい、気難しそうな大家のコリンズに中を案内してもらう
そこは昔ながらの下宿で、募集されていた部屋も古めかしさが残る屋根裏部屋だったが、エリーはすぐに気に入りここを新たな住まいと決める
コリンズによれば元々メイドとして雇われていたこの下宿を安値で買い取ったものらしく、夜8時以降男を連れ込まないなどのルールだけ守るようにと、きつくエリーに言うのだった
やがて引越を終えたエリーは、その晩 不思議な夢を見る
そこに広がっていたのは1965年のロンドンで、エリーは吸い込まれるように、ナイトクラブ“カフェ・ド・パリ”へと吸い込まれていく
鏡を見ると、この夢の中でエリーは美しく若い女性サンディになっているらしかった
歌手志望のサンディは自分を売り込むため、歌手達を束ねているジャックに猛アピールを繰り広げる
ジャックは彼女とのダンスを通してスターにはなれないと評するも、トラブルに巻き込まれたことで一気に親密になり、2人は熱いキスを交わす
それからすぐに自宅まで送ってもらったサンディは、ジャックと次の夜に会う約束をして別れる
サンディを通して成り行きを見ていたエリーは、彼女が自分と同じグージ・プレイス8番の屋根裏部屋に住んでいることを知り、彼女が眠った頃に目を覚ます
不思議な夢だと思っていたエリーだったが、学校でジョカスタから首筋にキスマークが残っていると馬鹿にされ、それが夢の中でサンディがジャックに付けられていたものと同じだと気付く
以来 夢の中でサンディとしての人生を追体験するようになるが、やがて彼女の運命は悲劇的なものに変わっていき、エリーの生活にも影響を与え始める



エドガー・ライト監督のサイコ・ホラー映画

現代に生きる平凡なティーンエイジャーと煌びやかな60年代を生きたダンサー
成功を夢見る2人の人生が時を超えて交錯し、次第に恐怖へと繋がる
ファンタジックなタイムトラベルから、ミステリー調のホラーに様変わりしていくジャンルスイッチが楽しい作品

美しく華々しい60年代の栄華と闇
成功を夢見る傍らにある危険
夢を追い過去と現代に生きた2人が直面する苦悩
その人生が重なるにつれサンディに共感していくエリーだけど、同時に悪夢に巻き込まれていく
独特の世界観から来る恐怖は新鮮味もあって面白い
また実在したサンディの末路を探るミステリー調の展開から、ラストも見事に欺かれた

ラストで明かされるサンディの悲劇の全貌は正に、夢を勝ち取れない女性の悲痛な声そのもの
ゴージャスな時代を舞台にしたスリリングな現代的寓話といった出来で、トーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイのダブルキャストも最高に映える
エドガー・ライト監督らしいセンス溢れる絵と音楽まで、隅々まで楽しめる作品なので観ましょう
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