なお

007/ユア・アイズ・オンリーのなおのレビュー・感想・評価

3.8
"あなただけに"

007シリーズ第12弾。
コメディ路線に舵を切りつつあった一連のロジャー版ボンド作品だったが、本作では一気にアクション路線へと方向転換。

✏️これぞスパイアクション
前2作を監督したルイス・ギルバートから、その後『消されたライセンス』まで実に5作品のメガホンを握ることになるジョン・グレンにバトンタッチ。

監督が変わればやはり作品も変わる。
前作では当シリーズがスパイ映画であることをほとんど忘れ、世間のSFブームを超意識した作風だったが、本作ではしっかりと「スパイアクション活劇」をしている。

熾烈なカーチェイスに始まり、もはや007シリーズのお家芸とも言える雪上でのスキーチェイス、お次は水中で繰り広げられる高難度ミッションに挑み、最後は決死のロッククライミングとアクション満載の内容。

雪上でのチェイスなどは過去作でも取り入れられた要素だが、それらとは比較にならないほど”見せ方”が洗練されている。

✏️シリーズ屈指
本作のボンドガール、メリナ・ハブロックを演じたキャロル・ブーケの美貌。
こちらも本作を語る上で外せない要素のひとつ。
キリっと引き締まった眉に、力強さのある眼光。
現代の映画スターたちと並べてもなんら見劣りしない魅力を持っている。

本作ではコメディ要素と共に、ボンドのお家芸である「美女とのロマンス」的なシーンも数えるほどしかない。

というのも、キャロルの美しさから来る清楚なイメージを崩したくないという制作陣の思いから、キャロルが官能的に映るシーンはほとんど撮影されず、あったとしても本編ではカットされている。

前作までは息をするように美女と唇を重ねていたボンドだが、とあるシーンに至っては、むしろ逆に女性からの誘惑をやんわりと断るレベル。
肉食系女子はあまり好みじゃないのだろうか…

ちなみに、彼女は前作『ムーンレイカー』の撮影を見学に来ていたところ、その魅力がプロデューサーの目に留まり、本作のボンドガールに起用されたのだという。

☑️まとめ
その他、というか特に映画冒頭の十数分だが、シリーズファンをニヤリとさせるカットもあり、ファンサービスにも余念がない。

また、これまでボンドの良き理解者であり作戦の司令塔・”M”を演じるバーナード・リーが撮影前に逝去。
そのため本作からしばらくは、ジョフリー・キーン演じるグレイ国防大臣が同様の役割を担うことになるなど、「これまで」と「これから」を意識した作品でもある。

とはいえ、やはり2時間弱の上映時間にしてはテンポの悪さは否めない。
アクション要素とボンドガール・メリナの見目麗しい活躍は確実に楽しめた。
★4つまであと一歩。

🎬2022年鑑賞数:94(37)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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