ユカリーヌ

エリカ38のユカリーヌのレビュー・感想・評価

エリカ38(2018年製作の映画)
3.5
【過去に観た映画】2019.8.24

浅田美代子のイメージチェンジをはかり、主演作品を作りたいという想いで発案した樹木希林の最初で最後の企画作品。

実際の投資詐欺事件をモチーフにして、60歳を過ぎているのに38歳と偽り、大金を詐取して
いく女の犯罪劇。

正に浅田美代子の為の映画という感じで、濡れ場はもちろん、若い男とのこっ恥ずかしくなるようなイチャイチャシーンも見せられた。

きらきらと美しく見せるシーンと、年以上にフケさせて
見せるシーンの対比が巧みであった。

最初は首謀の男の為に金を集めていたエリカだったが、おもしろいほどお金が集まりだし、
独自で動きだす。

男に家を買ってもらい、お手伝いさんをやとい、
プライベートエステをうけ、高級車、ブラドンのバッグや服をまとう。
ホストに貢ぎ、若い男を金で買う。

それが女の欲望なのか。
彼女はそれで満たされていたのか。

女の欲望をむき出しにしたように振る舞うが、母親に寄り添い、本音をつぶやくシーンは虚しい。

母親役を演じた樹木希林の存在感がこの映画を深いものに
見せていた。
少女時代の母と娘の映像が重なり、「赤とんぼ」を
口ずさむ所はせつない。

正直、「色香で男をたぶらかす」とか「巧みな話術で人を惑わす」という悪女には見えなかったが、被害者につめよられるシーンは浅田美代子ならではの演技が活きていたような感じ。

そして、エンドロールの後の演出こそがこの映画の本質。
欲望やお金の奴隷になる人のなんと醜いことか。


謎の女会長を演じた木内みどりの迫力もすごかったが、
「お金は本物を使った方がリアルに見えるから」と
百万円の束を自らもってきたとパンフにあった。


浅田美代子も「服に着られてるように見られたくない」と
ほとんどが自前の衣装だったとか。

いい女というのは人からどう見られるかということを
常に意識しているのだろう。だから磨かれていくのか。
ユカリーヌ

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