るるびっち

モービウスのるるびっちのレビュー・感想・評価

モービウス(2022年製作の映画)
3.2
葛藤が浅い。
ヒーローとヴィランの違いは何か。
彼らは双子のような存在。
どちらもスーパーパワーを持ち、善・悪いずれに使うかの相違しかない。
特に本作は、同質のヴァンパイアなので違いはない。
主人公も悪人も人を殺すが、傭兵はクズだから構わないが、子育て中の看護婦は気の毒だという扱い。
命に違いはない。とても偽善的な感じがする。

主人公と悪との線引きが曖昧。
どちらも、同じようなことをしている。
悪の力が大きくないので魅力が乏しい。
やはり悪は強くないといけない。

能力だけではなく、幼馴染で生い立ちや余命の無い疾患持ちという所も同じ。
ヴァンパイアの副作用として、血を求めることへの倫理観が唯一違う。
そこしか違いがないのだから、もっとトコトン主人公は自分を抑え込まなければいけないと思う。
鉄の意志で、血液断ちをしないといけない。
そこが緩い。
ちょっと断食しただけで、すぐ耐えられず飲もうとする。
アカンアカン。それでは悪人と変わらない。
自ら地中に埋まって、即身成仏する覚悟でないと。
日本に来て、即身成仏を見習って欲しい。

意識がなくなり、死ぬ手前まで断食をすべき。
でないとヒーローの資質ではない。
例えば血液断ちをして死ぬ直前に、見かねた恋人が自分の首筋を噛ませる。
無意識に反射的に吸う。
それで恋人が死ねば、重い十字架を背負うことになる。
その位、主人公は追い込まないといけない。
そうしないと、力が互角なだけに悪人と同質になる。

本作では恋人的な女性への処理が、傭兵殺しと同じく偽善的。
主人公に責任がのっていない。
そこの部分を過保護にすると、緩くなるからイカンのだよ。
十字架が軽すぎる。イヤリング並みだ。
重い十字架を背負っていないと、不正を許さぬ動機が軽くなるのだ。
でも、この主人公は結局ダークサイドのキャラかも知れない。
だとしたら今度は悪人が気の毒だ。案外、友達思いの良い奴だったじゃないか。
曖昧な映画。
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