TAKーKUN

ナイル殺人事件のTAKーKUNのレビュー・感想・評価

ナイル殺人事件(2022年製作の映画)
2.5
原作既読。イギリスのTVドラマシリーズ名探偵ポワロ、第9シーズン「ナイルに死す」鑑賞済み

TVドラマの方が時間数は短いながら、ほぼ原作通りで楽しめた。

本作はさすが映画らしく、演出も豪華でエジプト観光としても楽しめる。
しかし、肝心の謎解きの部分があまりにも弱い。
私がミステリー小説ファンだけあって、この手の映画にはかなり辛口になってしまうのはご了承いただきたい。

登場人物を少なくする、これはまあ仕方がない。映画ならではの豪華さや派手なアクションをするためであれば仕方がない。
しかし、ポワロの行動があまりにも場当たり的で、この人本当に名探偵なの?と疑いたくなる。
ただ謎を解いて犯人はこいつだ!!と言うだけでなく、「順番」が大事なのです。これを誤ると謎は解けても、その後の人間関係が崩れてしまう。原作のポワロはもちろんそれを理解していて、殺人事件にひもづく枝葉の事件を先に解決してから本筋に入ってる。京極夏彦さんの京極堂シリーズで言うと、憑き物を落とすイメージ。

本作は登場人物を少なくしたせいで原作にあった枝葉の事件も2つぐらいになったから、憑き物を落としていく作業が減ったのはまだ許せる。だけど、その順番がずさんで謎解きの前のあるシーンが、何でこの人物でこのタイミングで話すのかが全く理解できない。しかも、勘違いした誤った情報で。

最後の謎解きもまるで神様で全部お見通しかのごとく、根拠とか消去法無しに話すから観客が置いてけぼり。謎を解く根拠になった矛盾点や、真実に至るまでの経緯を観客でも理解できるようにきちんと説明しないといけないでしょ。その説明が足りないのよ。理屈は分かるけど、どうしてその人じゃないといけないのか、他の人じゃあり得ないのかといった情報が少ないから、実はこうでしたーみたいな後出しじゃんけんのように見えてしまうのよね。

原作にはない、戦時中のポワロのエピソードを冒頭に持ってきて深みを出そうとするのは、シェイクスピア好きのケネス・ブラナーらしいなとは思いますが、ポワロシリーズを映画化するのであれば、もっとシェイクスピア以外にミステリー小説を読んで勉強すべきだったのではないでしょうか。
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