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ナイル殺人事件のCANACOのレビュー・感想・評価

ナイル殺人事件(2022年製作の映画)
3.6
ケネス・ブラナー監督・主演のアガサ・クリスティ作品第2弾。『オリエント急行殺人事件』と同じく、クリスティファンなら知らない人はいない代表作に挑んでいる。

豪華客船で繰り広げられる大富豪の女性とその夫となる男性の結婚パーティ。そこで女性が殺され、“世界一の名探偵”ポアロと相棒役のブークが犯人を探す物語。
大富豪の女性を好いていた医師や、新郎の元カノかつ新婦の友人でストーカーのように2人をつけまわす女性など、怪しい人だらけの状況のなか、キレキレのポアロが灰色の脳細胞を働かせて結論を導く。

前作同様、人情味があり“よく動く”ポアロ像を作り上げているケネス版。それだけでも従来のポアロと違うのに、冒頭で「そうだったの!?(そんなん原作にあった?いやない)」と全クリスティファンが衝撃を受ける「ポアロの秘密」が明かされる。原作崇拝者はその動揺から立ち直れないままストーリーが進んでしまう恐れがある。大袈裟かな。

「豪華客船を舞台にしたミステリー」としては秀逸で、ショッキングなシーンを挟みながらメリハリのある展開で面白く見られた。ガル・ガドット演じるリネットや、ソフィー・オコネドー演じるブルース歌手のサロメ・オッタボーンなど、魅力的な女性が多い。あと、(時代的に仕方ないが)原作の各話ではふんだんに出てくる“人種の決めつけ”がなくなり、多様性を意識しているのは前作同様よい。

ただ、どうしても受け入れがたいのがブークのこと。原作には登場していないブークの扱いが雑で、前作からの職業設定変更等、キャラクターの人格への愛が浅いなって思う。相棒役なのだから、特にこんな扱いしないでほしかった。この雑な扱いが「アクロイド殺し」への布石だったら、ケネス・ブラナーを嫌いになる。

実際はCGらしいが、ダイナミックなナイルの風景や美しい豪華客船は劇場で見たかったと思う仕上がりだった。
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