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ナイル殺人事件のharunomaのレビュー・感想・評価

ナイル殺人事件(2022年製作の映画)
2.2
20世紀1914、戦場の黒い鳥、水たまり、枯木、塹壕のモノクロームから始まる『ナイル殺人事件』は塹壕を横切る(前をゆく)白い犬も相まって、アレクセイ・ゲルマンの労働があり、黒沢の公理は、ヤンでもゴダールでもブレッソンでもアメリカ映画でもなく、もしかしたらケネス・ブラナーだったのかも知れない(イギリス映画ではなく北アイルランドか)。トラウマ的記憶を情念と事件の起因にするミステリーは、砂の器の日本海レベルではまったくなく、やはり国家の戦争を軸にするべきであって、戦後のうやむやなどどうでもよい。
ウミツバメからの煙幕からの奇襲はおもしろそうだったが、マスクのせいか、CGなのか、煙の中を進む集団の映像は、なぜか肩透かし。
とエジプトはVFXばかりで肩透かしが続く。数年前の予告編にあった、夜の暗い河の水から這い上がる女性のショット(地獄の黙示録ばりの、別の映画)や、燃え上がる炎の客船の引きのショットはどこにあるのか、妄想だったのか。
長すぎる公開延期の間に編集が変わったのかよく分からない。
シシー・スペイセク的人物がキャスティングされないあたりも限界を感じる。
推理のしょっぱなは、強引な尋問をかますポアロには辟易するし、これだけ声も顔も飛んでこないアーミー・ハマーもめずらしい。
冒頭6カットくらいの期待値だけあるだけで、やはり駄作。
前作の雪山の列車のとんでもの方がよかった。
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