両論併記といった類のフェアネスとは無縁のドキュメンタリーだが、開始すぐに監督自身の立場を明言しているのでそういう意味ではフェアなのかもしれない。
多少誇張した編集などもあるが、内容を鑑みるとそれでも抑制されている方なのではないだろうか。
ズルズルと芋ずる式にいろいろなことが繋がっていくラストスパートはかなりのスペクタクルで盛り上がる。続々と有名人物たちが立ち現れてくる流れは右翼界のアベンジャーズと言っても過言ではない。名前だけの出演ではあるものの吉村まで登場したのはさすがに激アツ。最終的に裏のボスとして登場した人物にサノスほどの悪役としての魅力が感じられなかったところはエンタメとして弱いところではあるが、実話の限界というところだろう。登場シーンが短かったのもある。
また、直接言葉での明確な説明があったわけではないが、「真実がどうであったか」という議論の部分が大切なのではなく、「今生きている人をどうケアするか、今後の世界をどう良くしていくかが大切だ」といった主張が見ていくにつれぼんやり見えてくるあたりも筋が通っている。
惜しむらくは統一教会に対する言及がないところで、その部分を加えたアップデート版をぜひ撮影してもらいたい。
あと個人的には、主張の内容より、その発言に至るまでの人生の道すじがとても気になった。
彼らは果たして"邪悪"なのか。その辺に切り込むドキュメンタリーも観てみたい。
