えむえすぷらす

主戦場のえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
5.0
ホロコースト否定論の作家を批判したら名誉毀損で訴えられたアメリカのホロコースト研究者リップシュタット教授が書いたノンフィクションを映画化した「否定と肯定」の法廷シーンを独立させて慰安婦否定論について扱ったかのようなドキュメンタリー。YouTuberでもあるというデザキ監督のハイテンポで濃密な2時間。観終わった瞬間ぐったりした。情報量過多なんです。

否定論者の方々は笑顔で楽しく否定論を主張しておられている。そして新規性のある話はされていないし、否定論者の方々の記者会見でも内容について否定はされていない。普段から言われてる話なので否定するのは難しいと思う。
彼らは視野を狭め顕微鏡のような範囲で物事を分析して否定しようとする。当時の国の体制のあり方など調べていくと否定する方が難しい。この問題は記憶と事実の継承でしか解決しない。忘却と沈黙そして尊厳は金で買う事は出来ない。

ちなみに外国で積極的に解決済なのに蒸し返されてる的なことを主張して動いているのは外務省だったりする。本作でもアメリカでの教科書著者への外交公館からのお使いがとんでもない事をやってましたが、こういう動きがあるから民間レベルでも同調した動きがあると見た方が良いですね。

追記。感想を見ていると銅像批判がありましたが戦争性虐待の像だと思うし、実際この映画内で関係者もそういう説明はされてますけどね。韓国の方々は公で語られるようになりましたが、そうなってない国も多いです。1942年豪看護婦二十一人虐殺事件(バンカ島事件)は戦後、政府の責任論になるのを嫌ったらしく公に捜査もされず終わったという話が報道されてました。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-47986990

戦時性暴力は公に語られにくい側面を持っています。語られる問題だけじゃないし、我が国も公娼制による事実上の自由剥奪、相矛盾する法律などあって契約の自由の乱用による事実上の奴隷状態を認めていた実態が従軍慰安婦を生み出す遠因にもなっている(何故か公娼制があるから慰安婦制度も問題ないとなる人がいますが、それは全く真逆で公娼制も問題だったんですよ。女性と子どもの人権のなさが生んだ事態でした)
管理売春って自由になったりやめたり出来るような仕事ではないという単純な事実すら無視して行われる言いがかりの根は深い。