EDDIE

幸福な囚人のEDDIEのレビュー・感想・評価

幸福な囚人(2019年製作の映画)
4.0
現代社会における羨望、嫉妬、渇望、あらゆる欲求に対して一つの答えを導き出す。本能に忠実にあれという自らの殻を破れない主人公の闇に堕ちていく模様は「明日は我が身」という教訓として突き付けられる。

さて、本作はシネマート新宿、シネマート心斎橋と全国でも2館のみ上映という作品。
若干29歳の天野友二朗監督の商業映画デビュー作。きっと低予算ながらも、映画にかける熱い想いをひしひしと感じた良作でした。

本作主演の山中アラタに注目いただきたい。北野武監督『アウトレイジ ビヨンド』や園子温監督『地獄でなぜ悪い』『ヒミズ』など、数々の話題作にも出演しキャリアを積み上げている俳優です。仲村トオル主演のドラマ『ラストチャンス 再生請負人』にも出演されていたりと実は様々な作品に出演されている方です。
ちょっとしたプライベートのご縁もあり、今回は鑑賞する運びとなったんですが、贔屓目抜きにしてとても良い作品でした。

無口で不器用で人付き合いも決して上手くない主人公・澤田を演じます。彼は不妊症をきっかけに精神を病んだ妻を支えながら、陰口・悪口の横行するけったいな会社で日々頑張って働いていたわけです。
そこに現れた岸本という海外勤務経験のある男が彼の人生を大きく狂わしていきます。

映画をよく観る方は本作の仕掛けに早々と気付くと思うんですが、とにかくドロドロとした重苦しい雰囲気の中で、自らの殻を破ろうともがき苦しむ澤田の姿に自分を重ねずにはいられませんでした。

自分が澤田と同じ境遇というわけではありませんが、とにかく日本の会社に蔓延る鬱々とした職場の雰囲気というのが凄く嫌らしく如実に映し出されており、他人事に思うことができません。
本作に出てくる登場人物が見事に嫌なヤツばかりで、唯一誠実でまともな澤田という人間が狂っていく模様があまりにも生々しいのです。

まぁ本作では濡れ場もいくつか出てくるんですが、映画の雰囲気を考えるとそこまでやっといて脱がないのかという中途半端さを感じてしまいました。
ただそんなところを除けば、現代社会の膿のような部分を突いた天野監督の意欲作として大変素晴らしいものを見せていただきました。

あと、本作の職場の部長がかなり腹立つ(笑)

山中アラタさんの今後の活躍にもさらに期待したいところですね!
EDDIE

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