純

華麗なるギャツビーの純のレビュー・感想・評価

華麗なるギャツビー(1974年製作の映画)
3.7
恐慌前のアメリカを背景に深い人間心理が描かれた大作である。ナレーションの言葉もまさに教訓にすべきものが多く、捉え方も何通りでもあるだろう。実は私はデイジーが悪者だと感じたことはなく、ナレーションでギャツビーを犠牲者と呼んだのと同様に彼女も一種の犠牲者であり、時代の産物なのではないだろうかと思っている。彼女の考え方や振る舞い方はその環境から影響を受けているからだ。
また、よくディカプリオのバージョンと比べられてこっちの方が原作に近いと言われるが、私はお互いに秀でた部分があると思った。例えば私はパーティーシーンやギャツビーとデイジーのキスシーンなどでは旧作の雰囲気や演出がしっくりきたし、ギャツビーの死後のシーンが丁寧に描かれてあった点も素晴らしいと思った。とりわけ子供が登場するシーンが良かった。登場人物それぞれの心情が表情や言動に表れていて、その繊細さが好きである。一方新作の方では旧作よりはるかにニック目線でストーリーが進む。この点は私が1番重要視しているポイントで、この物語がアメリカ最高峰の文学作品と言われる所以とも考えている。旧作では最初と最後だけというわずかなものだったのが残念だ。更にシャツのシーンや事故の回想シーンも新作が素晴らしい。音楽はどちらも良かった。(ただシャツのシーンでの新作の音楽は最高だと思う。)
ニックとジョーダンが交わしていたが、この物語でケアレスでなかった人などいるのだろうか。皆自分の夢を持ちながら何かに油断し、見落としている。ギャツビーのやりきれなさやあの後の恐慌でデイジー達はどう生きるのかを考えるとこの作品の奥深さを感じる。
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