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いつくしみふかきのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

いつくしみふかき(2019年製作の映画)
4.5
1300本目のレビューで、思いがけず良作に出会えました。
会ったこともないヤクザな父の犯罪の汚名を被らされて育った息子の苦悩と成長を描いています。ストーリーの展開が何度も予想外に転び、脚本のうまさにうなりました。人生は予想外のことだらけ。不運は自分のせいではなくても、好運は自分の力でなんとかなるかもしれない。でも、そこに気づくまでには何度も転ばないとならない。自分の足で歩き始めないと転べない。すごく好きな作品でした。

倫理観なく、人の信頼を無にするヤクザな父親役で、わたなべいっけいが初主演。人当たりがよく気弱そうで、一見、善い人にみえるけれど、実は腹黒く、利己的で冷淡な人物をうまく演じています。

そんな父親ヒロシが、息子進一の誕生する日に、自分の家や隣近所の空き巣に入り、村人たちから袋叩きに遭い、二度と村には戻れなくなります。この汚名を狭い村で一身に負って育った進一。その進一を庇いながらも、父親の血が息子にも流れていることに恐れを感じている母親。母親は息子進一に愛情を注ぎますが、父親の血が怖く、過保護になっていきます。

何をやってもダメな進一。人生も自分も捨てています。進一役の遠山雄さん、お初にお目にかかりました。劇団員のようです。

進一を支えてくれる人は母親と牧師だけ。牧師は先々を見て愛情をかけてくれました。ある日、牧師が一計を案じ…の後に二転三転します。

ラストもよかったけど、まだこの先も人生は二転三転、七転び八起き。転んでも立ち上がればいいさ。

大山晃一郎監督の長編デビュー作。エンタメ味も少し入り、広がりと盛りだくさんな感じはありましたが、最終的に一つの道にまとまり、豊かな気持ちになり、たいへん満足しました。今後の作品楽しみにしています。

主題歌を歌ったタテタカコさんの透明感ある歌声もよかったです。
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