みかんぼうや

いつくしみふかきのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

いつくしみふかき(2019年製作の映画)
3.6
とても独特の間とテンポの邦画。一見突拍子もなくザク切りのようにも見える演出は、観方によってはどこか芸術的。破天荒に映る物語の展開は、終わってみれば意外と綺麗に収まって見える。危険な香りのするオープニングから、時にコミカルにも感じる内容。しかし人間ドラマがある。なかなか掴みどころがなく、現代邦画でこの手のタイプの作品にはあまり出会ったことがないかもしれない(昭和邦画では結構ありそうだが)。

しかも、この破天荒な物語がなんと実話ベースの物語だという。悪行ばかりを行い村から逃走したチンピラ親父(渡辺いっけい)とその父の顔も知らずに女手一つで育てられた息子が再会する物語は、展開もなかなか読みづらい。

その独特な演出と見えづらい物語に、ガッツリと作品に入り込むことはできないまでも、最後まで興味をそそられ釘付けになってしまった事実。「面白い」というよりも「魅力的」な作品。そして点数のつけどころがなかなか難しい作品。

渡辺いっけいはベテランながら本作で映画初主演だとか。一見人が良さそうで、裏で何を考えているか分からない彼の雰囲気が、本作主人公のキャラクターに妙にマッチしていた。
みかんぼうや

みかんぼうや