ケチャこKechaco

クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険のケチャこKechacoのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

クレしん映画はいろんなベクトルで面白い映画がいっぱいあるけど、個人的に『クレヨンしんちゃんの映画』と聞いて真っ先にイメージする映画はこれかなぁ。馬鹿馬鹿しいけど笑っちゃうギャグや下ネタ、劇場版で大喜利をかますごとく全力で世界観をぶっ飛ばすノリ、思いの外大人も楽しめてしまう要素もありつつほんのりと泣けるシーンもあり……
最近の映画シリーズも面白いものはもちろんあるけど、初期のこの作品も、あの時代だからこそできたおおらかなノリがあっていい感じだと思う。
あと近年のやつにありがちなテーマ重視の作風もあまりなく、娯楽作に振り切ってるのも個人的に見やすいポイントだったり。


この作品でやっぱり一番に挙げたいのは敵役であるマカオとジョマのやたらすごい存在感。
二人ともやけに距離が近くて冒頭から異様な濃ゆさを持ってるんだけど、弱点がバレるまで冷静な口調を崩さず佇まいに妙に品格と凄みがある。
部下たちのバトルも目で見て面白さがあったんだけど、それ以上にマカオとジョマ二人のボス戦は短いながらもいろんな意味で濃密で。
バレエ用語を交えて踊る上品さ(のどごしやら何やら変な点数が出てるの笑った)ババ抜きの心理戦で限界までひろしを翻弄する頭のキレ(表情の作画にとにかく気合いが入っててすごい)。
ラストのジョーカー争奪戦で二人はようやく取り乱すわけだけど、体格のいいオカマ二人が全速力で追いかけてくる絵面は正直めっちゃ怖い。ギャグタッチで面白くなってるけれども。ジョーカー争奪戦、城中を駆け回り名刺やらサスペンダーやらがなんやかんやの様は見ていてコミカルで楽しい。

劇中のしんのすけの心情の変化も見所だった。
『オカマ魔女二人から世界を救ってほしい』というトッペマの願いを最初は怖いからと断るんだけど、敵の手によって奪われた家族を救う覚悟を固め、自分の意思でトランプを手に一人ヘンダーランドへ行く。
この作品にテーマ性はあまりないと上述はしたんだけど、この一連のシーンはまだ幼いしんのすけが決意を経て精神的に成長する様が描かれていてアツくて沁みる。
ヘンダーランドに行く前のしんのすけを周囲から孤立させ追い詰めるス・ノーマン・パーも恐ろしさマシマシで怖いのよ……だからこそしんのすけが敵の手に堕ちそうになった時、トランプの力が覚醒して彼の大好きなヒーローが現れるシーンのカタルシスが物凄くて。
その後、家族を救いトッペマとの別れを経験した後、復活したひろしの「しんのすけは少し大人になったんだ」が感慨深くて染み入るのよね……基本的におバカで楽しい映画だったけど、だからこそこのシーンの切なさが際立った。


ヒーロー二人がぶりぶりざえもんを殴る蹴るしてリンチする絵面はめちゃくちゃ笑ったけど見たくないやつだった。やたら印象に残りまくって時々思い出すとふふってなる。
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