えいがうるふ

ミッドサマーのえいがうるふのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
5.0
なるほど確かにここまで絵面が終始明るいホラーも珍しい。陽光が降り注ぐお花いっぱいのメルヘンな情景ながら、しっかりキモくてグロい。おぞましさのK点を超えた先に涅槃が見える白昼夢ホラーの傑作。

似たような奇祭もので「ウィッカーマン」という珍作を思い出したが、あの「絶対に笑ってはいけないお祭り」設定が作りようによってはここまで引き込まれる映像にできるのかと素直に感心した。(ちなみに私が観たウィッカーマンはニコラス刑事主演の残念なリメイクの方で、オリジナルは見応えありらしい)

悲惨すぎる展開なので、主要な登場人物の誰にも感情移入できないのがある意味救い。特に前半のヒロインのウザさには激しくイライラさせられるが、あのロッタちゃんがそのまま大きくなったような幼児体型と駄々っ子キャラだからこそ、お花の冠を載せたらあら不思議、本当は怖い森の妖精が見事に完成する。ひとたびそんな彼女の心情にシンクロしてしまえば、あの凄惨なエンディングさえ後味爽快!に思えてしまうところが一番怖い作品かも。ちなみに私自身は壮絶なハッピーエンドだなあと思った。

大勢に観られ語られている話題作でも、作家性の表出が極端だったりあまりに個々の生理感覚や嗜好性にダイレクトに左右される内容だったりで結局他人様の評価が全く参考にならない作品というものがあるが、まさにそのタイプ。
映画としての完成度に関わらず、どんなに映像や音楽が美しかろうが構図やカメラワークが秀逸だろうが無理な人には無理だし、どんなに展開が冗長で意味不明だろうがあたおかな世界観だろうが表現が過剰に異常だろうがハマる人はハマり、そこに理由はない。興味の無い人にいくら推しの魅力を語っても伝わらないと一緒で、万人受けしないのは百も承知の上で分かる者同士で無言で握手して頷きあってりゃいいんだと思う。

公開当時あまりにセンセーショナルに騒がれていたのと万が一あわなかった場合に映画館鑑賞では逃げ場が無いだろうと警戒して未見のままだった作品をようやくWOWOW録画で観たわけだが、結果、自分にとっては嬉しい大当たりど真ん中のA24だった。いつかスクリーンでディレクターズ・カット版を観たい。

ところでメイクイーンといえば娘がカトリックの幼稚園に通っていた時、5月のマリア祭でお花をまく天使の役をやったことを思い出した。白装束でお花の冠を載せた姿はまさにメイクイーンだった。
どんなもんか知りたい方は「マリア祭」で画像検索してみては。全国のカトリック系の幼稚園で普通に行われている微笑ましい年中行事だが、この映画を観た後に眺めるとちょっと複雑(笑)