ER

ミッドサマーのERのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 カルト的な村社会に入り込んでいき、そこで不思議体験をしていく「不思議な国のアリス」と構造としては近いのかもしれない。

 この映画の最も怖いところは、善悪の分別が自分ではなく村側にあり、全て村側の価値観のもとに(音楽や色彩、劇中絵画などメタ的な要素も含め)展開が進められていくことだと思う。

 特に色彩や音楽について、物語の前半はダニーの感情に合わせて重めで暗いものが使用されていたが、ホルガ村に着いてからはどんなことがあっても軽やかで明るい描写が続いていき、物語の主導権を村に握られたようで気味が悪い。

 誰か人が死んでも、また人を殺しても、それは自然の始祖である巨人ユミルを讃える名の下の行動であれば全て許される。そこには犠牲となる個人の情も価値観も関係なく、儀式的に粛々とこなされる。

 生贄に差し上げられた人々に人権がなく、例え村のコミュニティに属する人物であっても、平気で裏切って無惨に殺されてしまう。

 その村の意思に基づいたとされる行動が、村の住人が異常を働くことを正当化しているのがとにかく恐ろしかった。

 また、序盤のダニーとクリスチャンのお互いに不満を抱えつつも我慢して別れないカップルの描写もリアルだった。ある意味この映画は、カルトな価値観・集団意識に巻き込まれていった「花束みたいな恋をした」なのかもしれない。
ER

ER