真田ピロシキ

ミッドサマーの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
2.7
今のご時世にピッタリなカルト宗教ホラーと思って。

この映画は2時間半近くあって、しかも如何にもホラーらしい異様な出来事が起こるまでは1時間近くを要する。冒頭からして主人公ダニー(フローレンス・ピュー)が彼氏のクリスチャン(ジャック・レイナー)に妹と連絡がつかないことを電話で訴えていてそれからして結構長い。これが全く無駄ではなくて、クリスチャンは心を病んだダニーを重荷に感じていることが語られており、結局妹は両親と共に死んでいてダニーは大きなトラウマを抱えてそれが今後への布石として丹念に印象付けられる。ダニーはスウェーデンに向かう飛行機でも、カルトコミューンについてからもPTSDを触発されてて、表面上は穏やかなシーンがほとんどなのに映画には不穏な雰囲気を漂わせている。

そういう訳で何かが起きていない時は明るいのに不気味な居心地の悪さがあったのだが、初めてのショックシーンが出てからトーンダウン。事前にカルトコミューンでの人生は72歳までが定められた生でそれ以降はボカして答えられていたが、儀式で老人2人が崖の上に立ったところで容易に察する。それがあまりに容易、素直すぎて拍子抜け。PLAN72ですよ。ここでゴア描写が解禁されるが作り物めいてて嫌悪感など特になく興醒め。その後もカニバリズムを予想させるシーンがあったり、近親相姦の事実が明かされたりとそれっぽいカルトホラーの特盛丼という風な節操のなさでますます白ける。死ぬために行動するような仲間連中もね。

そんな感じで長いのですっかり気が散りがちで見ていたけれど、クライマックスで家族の件で傷心していたダニーを耐久ダンス大会で優勝させてやり女王と呼んで自尊感情を高め、セックス儀式に参加したクリスチャンを恐らく目撃するように誘導して、最後の決心も自分の意志のように見せて掌で踊らせるカルトの手法を体験できるのは見入られる。セックスで釣るのもカルトの常套だよな。しかしそれも現実社会に政府と癒着して腐った教義を元に国の憲法をも変えようとし、マスコミも沈黙してそれを知らされてもなおアホな国民が目を逸らす日本の統一教会の怖さに比べれば屁でもないですね。所詮絵空事のカルト。ビールを飲みながら笑い飛ばせる。この映画のカルトは野望もなくて僻地に引きこもっているだけで多額の献金を求めてもいないので、90年に1回何人か死ぬだけでは大したことなさそうなのよね。生贄にされる人は勿論たまったもんじゃないけど。リアル志向のカルト宗教映画だったのが災いした。これならあの赤毛からゾンビや悪魔が産まれてウギャーってなった方が面白かったと思うなー