すえ

ミッドサマーのすえのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.2
記録

【狂ってる?それ、褒め言葉ね。】

『ボーはおそれている』の復習。何回も観てるけど、ちゃんと観たらくっそ疲れる。

アリ・アスターはこんなに面白いコメディが撮れる、それが見事に証明された今作。短編の『The Turtle’s Head』も良かったが、こいつは下ネタとの相性が抜群にいい。爆笑必至のコメディに仕上がっている。

あまりよく出来た映画とは言えないが、悔しいながら実は一時期お気に入りとして挙げていたくらい好き。大嫌いで大好きな作品。狂ってる狂ってると言われているが、実際には『ヘレディタリー』の方が数倍狂っているんだなこれが。

【家族という主題の拡大】
アリ・アスターが初期から描き続けてきている家族や繋がりというテーマは、今作ではもう少し広さを持ち、共同体という主題になっている。また『ミッドサマー』では度々、儀式の場面が現れる。共同体と儀式は非常に深い関係にあり、儀式に参加することでその集団への帰属意識が高まり、コミュニティの一員だと自他ともに認め合える。そうした繋がりを破壊するのはいつだって外部の人間であるため、コミュニティがより保守的に、より縮小していくのは仕方がないことなのだろう。

『ミッドサマー』では主人公たちの無理解で習慣を破壊していく。異物は排除され、コミュニティの恒常性が保たれる。彼らが殺されたのは当然のことなのだろう。唯一仲間と認められたダニー、仲間は彼女に寄り添い、同じように泣き叫ぶ。

【図形のモチーフ】
やはりラストの強大な三角形のイメージに映画は乗っ取られてしまうため、“三角形”の映画だ!と言いたくなってしまう。だがしかし、寧ろ画面を支配しているのは四角形のイメージなのではないだろうか。三角形のイメージが現れてくるのは中盤で、序盤ではずっと四角形が占領している。絵画や写真、窓などが多用される。こういうミザンセーヌがやはり凄い、構図そのものが意味を持っている。『ヘレディタリー』にも見られたように多重フレームも効果的に使われており、閉所での閉塞感は健在。

また、特徴的に使われる円形は“環”の象徴でもあり、あの村落での命の循環、終わりなき永遠を感じさせるものになっている。

特に好きなのは、性行為の場面。俯瞰すると目のかたちになっており、共同体内での監視、把握というイメージが全面に出ている。

【広くて狭い】
初め、この映画は『ヘレディタリー』とは違い、オープンでワイドな映画だと思っていた。しかし、それはとんでもない勘違いで、スウェーデンの広大な土地の、この限られた空間で展開されるこの映画は寧ろ閉塞的ともいえる。しかし、アリ・アスターが醸し出す閉塞感が直接的に画に表れないため、ショット自体はあまり良くなかった気がする。たまに出現する“部屋”という狭い空間のショットは、『ヘレディタリー』でも思ったがめちゃくちゃ上手い。でも俯瞰ショットはとても良くなってた〜、新作でも見られるだろうか。

【運命、なんですわァ】
もうわざわざ言及するほどでもないが、初っ端から映画の結末は提示されているし、洗濯物のシーンやその他のシーンでもみられる。アリ・アスターはこういう、逃れられない運命を描くのが好きなんだろう。『ヘレディタリー』でも家族、遺伝という不可避の運命を描いた。それを悪魔や神などの形而上的なものを絡めて、ある種の神的イメージを演出する。君はどんな人生を送ってきたんだ、アリ・アスター…

【おわりに】
サウンドデザインとか、炎や熊の象徴とか、模様についてとか色々あるけど、書くのめんどくさくなっちゃった。

アリ・アスター映画の1番良いところはやっぱり、映画を誰かに話したい、誰かと共有したいと思うところだな。

2024,41本目 2/18 NETFLIX
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