ぼさー

ミッドサマーのぼさーのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
2.8
主役ダニーが直面した家族の不幸を癒すように、前半はじっくり丁寧に、そして美しく独自の集団生活が描かれる。途中、集団仲間の自死のグロいシーンもあるけど、それも夢物語のように美しく描かれていた。
そんな感じで集団生活の導入部はかなり時間をかけて丁寧に描かれていたのだけど、ダニー達一行の仲間達が姿を隠すようになってから、前半丁寧に描かれていた世界観が台無しになる形でホラー映画的な展開となった。

安易に登場人物を殺してしまう展開のためにB級ホラー映画の様式に準じてしまい物語の意外性が見込めなくなってしまったように思う。

前半あれだけ丁寧に美しい集団生活を描いたのだから、その美しさを保ったまま、登場人物達がいつのまにか狂気に陥ってしまい我々鑑賞者も狂気に同調してしまうような、そんな心理的なホラーに仕立てられたと思った。

それと美しい舞台にドラッグやマジックマッシュルームによる幻覚を持ってきてしまったのも安直な気がした。宗教的な力で幻覚を見せないと導入部の丁寧な宗教描写が意味なくなっちゃうじゃん。

****
好意的に物語を解釈するならば、家族心中でメンタルがボロボロになり狂気に陥りかねない状態のダニーが、さらなる狂気の集団の中で共同生活するなかで、自らの常識や価値観がアップデートされ、自己回復し笑顔を取り戻すという点が救いといえば救いだった。
ズタぼろのメンタルも新たな狂気で上書くことで幸福感を得られる的なメッセージ。
そういうメッセージを置くことで宗教の意義や関わり方などを考えるきっかけになりうる作品ではあった。
安易に殺さなければね。
ぼさー

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