このレビューはネタバレを含みます
身を裂くようなハートブレイク、個人としてどんな絶望を抱えようと、他者は厄介者として眉を顰める。
人から、集団から拒絶される恐怖。
そしてその先で彼女を受け入れる新たな価値観。
側から見れば異質でも、その社会の中では全てが完結している。
霧の晴れたような笑顔で、映画はハッピーエンドを迎える。
しかしそれは、かりそめの共同体の中に身を置いてるだけ、依存の対象が変化しただけの話で、それが本当の幸福であるはずがない。
この映画は、登場人物の価値観が変化するような描写がほとんど存在せず、主人公達がただ大きな流れに飲み込まれていく様をひとつの現象として上からの視点で描いているのが印象的だ。
情緒的な演出が印象的なのに一貫して乾いた目線が入っている。
個人の意思が介在出来ない、大きな流れの中に巻き込まれていく登場人物たち。
生きる為には、食卓を囲まなければならない。
呪縛が一番おそろしい。それは社会や人生自体がそうであるから。