Millet

ミッドサマーのMilletのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

閉ざされた村の独自の思想や文化がテーマというだけで、特定の人には刺さる。
私的には大当たりな映画。10回は見た。

双極性障害の妹と両親だけが一家心中で死んで、1人取り残されたダニー。
恋人のクリスチャンは友人らからもダニーは面倒な女だからさっさと別れちまえよ、なんて囃し立てているが、流石に家族を失ってすぐに別れを告げることもできずにズルズルと関係を続けてしまう。
友人たちだけで行こうとしていたスウェーデン旅行の話を聞いたダニーはまたヒステリックになるが、フラれたくない(孤独になりたくない)一心で平常心を装う。
だが、社交辞令で一緒に行こうと言われてスウェーデンへ同行することに。男からしたら嫌な女だ。
そんな嫌な女もホルガのコミューンという生き方に心の傷を癒され、良くも悪くもクリスチャンとの別れを決意出来るようになった。

ホルガのお祭りについてのタペストリーの伏線もしっかり回収。
みんなでの食事のシーンでもクリスチャンだけジュースの色がオレンジ色だ。おそらく経血を混ぜた媚薬のようなものなのだろう。
最近は聞かなくなったが、ここ日本でもバレンタインのチョコレートに経血を混ぜるのが若い世代を中心に流行ったことがある。
※経血が媚薬になるというのは完全にデマなのでやらないように。
あのシーン、女性からするとクリスチャンは体調が悪そうに見えるが、実際は精力を高められる薬のようなもので勃起がおさまらず猫背になって苦しそうにしている。
男性からするとあるあるな話なのだろうが…

それからわざと近親交配をして障害や奇形のある子供を作り、その子に聖典の書き足しをさせるというのも、サラッと話しているがかなりディープな文化である。

麻薬効果のあるハーブなどでみんな常にハイになりながらも、真剣に儀式を続けている様子は本当に不気味で良かった。

通常盤ではカットされていて、ディレクターズカット版でのみ見られる、子供が水に入って生贄になろうとするのを止めるという儀式。そのあとコニーが水で殺されている。

それからサイモンの血の鷲という拷問は実際に存在する。
生きたまま皮を剥ぎ、肋骨を剥がして広げる。映画の中ではそこから肺だけが飛び出して動いていたので発見されたシーンではまだ生きていた。

序盤から後半になるにつれ、ダニーは植物と一体化し、ホルガの家族として受け入れられていることがわかる。
花が動いて見えるのはダニーの呼吸に合わせたリズムなのである。つまりホルガと息が合っているという意味で捉えることができる。

しかしこの映画はエンディングですべての儀式を終えたわけではない。
クリスチャンら生贄を燃やし、泣き叫ぶ村人とダニーで終わるが、このお祭りにはまだ続きがある。
前年のメイクイーンがいないことから、これからダニーも死ぬのではないかと考えられる。
それからみんなをホルガへ招待したペレはダニーのことが好きで、コミューンに取り入れたいと思っていたからクリスチャンたちを誘っていたのだろう。男はホルガへ別の遺伝子を持ち込むことができるし、生贄にもなる。そして意中のダニーをホルガの一員にできる。
でもそうだとしたらメイクイーンがこの後死ぬかもしれないという推理とは矛盾してしまうが、この想像の余地がある終わり方も気に入っている。
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