かみしの

ミッドサマーのかみしののネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

前作の『ヘレディタリー/継承』がとても素晴らしかったので、今回も相当期待していった。結果、とてもよかった。後の監督への質問で、「音響をいじっているときが映画製作でもっとも楽しい」というコメントがあったけれど、『ミッドサマー』はまさに音楽と絵画的映像によって成立している映画だった。

そもそも『ミッドサマー』をかなりよさそうと思ったのは、ちらっと見たトレイラーで、カルト教団じみた白服の人間たちが、磔刑の柱のようなインスタレーションの周りを踊り狂ったり、夏そのもののような黄色や白に彩られた絵画的な映像に惹かれたからだ。だから、ぼくがまず思い出したのはホドロフスキーの『エル・トポ』だった。あの映画も、絵画的だった。

精神疾患を抱える主人公のダニーは、冒頭で家族を心中で失う。恋人やその友人たちは彼女を疎ましく思っている。そういう孤立の場所から、物語ははじまる。

恋人の友人、ペレの帰省と民俗学研究を兼ねたスウェーデンへの旅行への同行を提案されるダニーだけれど、これも消極的な誘いだった。

ハルガでの祝祭については、文字ではなく絵として脳にはりついているので、これはもう一度スクリーンで見たい。とにかく明るい狂気に満ちていて、どこか健康的ですらあり、笑えるところすらあった。

ラストシーンは燃え上がる神殿を背景に、花に包まれたダニーが歩き回る様を映している。なんて美しいんだろう、と思った。

『ミッドサマー』は夏至祭の前後で大きな3つの対比が存在している。「冬と夏」「ガスと麻薬(自然産)」「家族と擬似家族」だ。ハルガの住人はことあるごとに大麻やマジックマッシュルームのような麻薬によって幻覚を楽しむ。樹木を崇拝し、死体は花や木で飾る。「自然」な寿命を経過したら自殺し、次の赤子に名前を譲渡する。流転する季節とともに存在する集団である。ダニーの結末は、決してハッピーエンドとはいえない。けれど、バッドエンドでもない。彼女は共同体に所属したのである。もっといえば、自然と一体化したのである。ダニーは孤立しなくなった。けれど、それが孤独ではなくなることであると同一であるかどうかはわからない。ダニーは孤独を感じる器官を奪われたようにも見える。風に揺れる花のように、ダニーは揺れ動く。ぼくたちは、その中身に立ち入ることはできない。

『万引き家族』や『パラサイト』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』など、ヒッピーのような、あるいは「普通の」家族と対照的な家族の物語が去年、今年といろいろでてきた。鑑賞後にアリ・アスター監督への質疑応答の時間があったので、ぜひとも「家族」について聞いてみたかたったのだけど、指名されなかったので残念だった。

また公開されたら、多くのイースター・エッグを探しながら、黄色と青の―スウェーデンの国旗の色である―死の世界を訪れたい
かみしの

かみしの