OBL1VIATE

ミッドサマーのOBL1VIATEのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
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序盤が実にトラウマティックなので注意(後半はコメディ)。『全てが伏線』というコメントを幾度かネットで見かけたがまだ回収できていないものがいくつかあり、すっきりするためにはどうやらディレクターズ・カットを観る必要があるらしい。ハイキーで可愛らしい色合いの画面構成と、マッシュルーム・ティーでハイになった主人公達の目に映る景色の歪みや幻覚に、シンプルサイケなBGMが絶妙にマッチしている。
冒頭、ダニーが泣き叫ぶ声とサイレンが共鳴し、徐々に一つの音になっていく様が描かれるが、ホルガにてショックで過呼吸を起こしたダニーに対し女性達が息遣いを一に揃えていくシーンは冒頭のトラウマを無意識のうちに惹起させる。そして結末で苦しみ悶える2人に共鳴するかのようにホルガの人々が泣き叫ぶクライマックスのシーンで観客のトラウマは完全に蘇る。「苦しみへの共鳴」というホルガの文化設定が、実に不快な音響効果をもたらしているのだ。
(現代において公共の場における儀礼的な叫びや嘆きという行為は一般的でないが、古代ローマ等では葬礼の際に「泣き女」を雇い葬列に加えることがあった。中世ヨーロッパにおいても儀礼的な叫び/嘆きは年代記等に認められる。その意味でホルガは古代の香りを感じさせるのだが、一方で、ホルガの性文化は古代ユートピア的な性の(男性による女性の)共有とは対極にあり、一人の女性(メイクイーン)によって厳格に管理されている)
『ベニスに死す』のビヨルン・アンドレセンを拝めます。(11)
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