ダイナ

ミッドサマーのダイナのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

不気味で不安を煽る展開に食い入るように観てましたが、終盤は恐怖というより「なんだこれw」といった気持ちになりました。

ジャンルは斬新なスリラー映画。舞台が夏至祭で昼が長いもんだから、屋内や真夜中といった画面的に暗いシーンはあるけど、基本屋外の昼間のような明るさで展開していく話なもんで、比較的明るい画面でも恐怖は全然感じられることに驚きました。

これは全体的に言える事で「人との関わり」の嫌な所がすごい丁寧に撮られていると感じました。ダニーが旅行に参加することに、みんな微妙な雰囲気をかもしたり、みんなでドラッグやろうって時にダニーが拒んでクリスが心配して周りが若干興ざめしたり、即興の誕生日祝いを取り繕うも気まずい空気になるダニーとクリスだったり、もうグロとかバイオレンスでない部分での妙に嫌な描写が上手い!

展開について、中盤までの不安な展開はド級に怖かったです!彼氏彼女・仲間内間でのギクシャクや、ダニーが家族を失う導入、共同体に向かう道中の上下真逆で映すドライブシーン、ドラッグでハイになって体が草と一体になってるような錯覚、恋愛成就の絵(陰毛)、とにかく不安にさせてくる。「なんで檻に熊いるんだよ」「その三角の建物絶対やばいことやってるだろ」「不気味な絵多すぎる」全く予想がつかないけど今後の展開でヤバさを発揮してくるであろうそれらに身構えるしかない。

なんといっても最初の共同体二人の飛び降りシーンは衝撃がすごい。「落ちるんだろ?お前らどうせ落ちるんだろ?」と不安になりながら外れてほしい期待を胸中に抱えながらも、悲しく的中。どうせそうなると頭で描いても実際目にするとキツイものがありますね。特に男の方は失敗して片脚が・・・からの金槌で・・・・もう私はサイモンと感情がリンクしてましたね。ここは狂ってると。褒め言葉じゃなく。

文化の違いの一言で受け入れられない光景。身内同士の確執。一人また一人姿を消していく仲間達。肉タルトあやしいです。もうこの全体的に白く明るく開放感ある世界。小綺麗な食事シーン。含みを感じさせる伝統的な絵。なにもかもが不安のきっかけになってきて、嫌なドキドキが止まらない。

だけど、自分の気持ちが「恐怖」から遠ざかるきっかけになったシーン。終盤のSEXシーン。乳を揉みながら喘ぎ声に共鳴する周囲に、なんか不気味というより笑えてきてしまいました。あれだと萎えるから謎ケムリで勃起させてたんですかね。並行して絶望するダニーの絶叫に共鳴する女達。共同体として女王に共感しているんだろうか。なんかオーバーすぎてダニーを馬鹿にしてるようにしか見えませんでした。(展開上そんなことは絶対無いんですが)ドキュメンタリーだとかノンフィクションものでたまに見る演技に見えるけど本気でやってる発声や立ち振る舞いをする人達。現代社会からほぼ隔絶された共同体からしたらそれが自然の姿なのかもしれませんね。

畑に刺さってる片脚、全裸逃亡クリス、着ぐるみクリス、なんか怖いというより面白い。サイモンの死体に関してはドラマ版ハンニバル感ありましたが、怒涛の展開を見させられてきた自分にとっては、不気味さというより「お、きたか」といった感じ。

燃える建物の前で絶叫するダニー。女王の正装なのか花だらけで動きづらそうなのもどこか笑えてきてしまう。ニッコリしたダニーにこっちもニッコリ。

ダニーにとってはハッピーエンドなんですよね。ペシが家族を失った後共同体に守られたように、同じ境遇で精神も疲弊しているダニーにとっては、自分を受容してくれるこの共同体こそが自分の居場所で、内の人よりは自分を捨てたクリス(外)を選んだということで。

我に返ってからは色んな事が気になってきてしょうがない。椅子取りゲーム的なもので女王決めるのも、リズムも動きも初見であろうダニーが優勝するのも冷静に考えたらどういうことだ。外から4人、内(共同体)から4人、あと一人の贄は外と内のどちらかを女王に選ばせるよ。だけど内側は立候補いなかったからビンゴで選ぶよ・・・。なんかこのメンバーを絶望に叩き落とすためだけに練られたルールのようで、伝統感というか計画的に仕組まれた感を感じなくもないです。文化の違い云々というより一方的に外の人殺してる辺り説明する気無かったなこれ。そりゃ聞いたら絶対逃げるからね。

なんだかんだ面白かった!恐怖全振りでなくシュールな笑い(個人的)が所々にあってラストまで楽しく鑑賞できました。
ダイナ

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