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ミッドサマーの海のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
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悲劇と喜劇は同じ盤面上に見出されていく、人を一人挟んだりガラスを一枚挟むことによって。本作でダニーを捕えて離さなかった悪夢にも、ある者は不快感を、ある者は理解を仄めかす。「曲解」だったと思う。ダニーに女性達が群がり喚くシーンで本当に吐き気がした。本作にある「あなたに起きていることはあなたが思っているほど深刻なものではありません」「あなたの苦痛を理解します」、そうやって浄化を示唆してるくせに映像の刺激と美的感覚に頼り切った中途半端な空気感、本当にいやらしいと思う。目的自体が救うことじゃなく、弱った人間につけ込んで自己を殺そうとしているようにしか感じられない、それがデフォルトであり不快感の根底=本作の魅力なんだとしても、それなら本作のイレギュラーに当たるはずのダニーの存在は無意味、最初からただの記号であり、彼女たちに与えられた属性の全てが無意味だ。個に一切の価値がなくなる。彼らの持つはずの過去を打ち消しながら進行していくシナリオから何を感じ取ればいいのか本当に分からないし、軸として考えていたダニーの扱いがあまりに思慮不足すぎ(これが駄作と決め打った最大の理由)、本作の何がそんなに面白くて何がそんなに笑えてしまうのか全く理解できなかった。ゴア描写にかなり精魂込めてるように感じたけど、本作におけるグロテスクってただの逃げ道でしょとしか思えない。とにかく酷かった。喧嘩売ってるのかと思った(無駄に偉そう)。やるならもっと徹底的にやればいいし、正気も余白も洗いざらい排除するくらいの勢いで楽しませてほしかった。すべてが宙ぶらりん。たぶんわたし、アリ・アスターとは破滅的に相性悪いんだと思う。フローレンス・ピューがとんでもなく可愛かったところだけ賞賛したい。きっといずれこのレビューは消す…。
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