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Corpse mania(英題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

Corpse mania(英題)(1981年製作の映画)
3.7
腐敗してるのは死体だけ?

死姦マニアが娼館の女性をターゲットに殺戮を繰り返す香港産ジャーロ。死姦で捕まった男リーの釈放と同時期に同様な手口の事件が発生。リーが犯行を再開したと考えた警察たちが捜査に乗り出す!皆さん書かれてる通り、死体に群がるウジ虫の量が半端なくて、本場イタリアとは一風変わった作風が新鮮!

監督のカイチーホンがイタリアのジャーロに感銘を受け、そのアイデアを香港に持ち込んで製作された作品らしい。日本版ジャーロ『ズームイン暴行団地』は80年製作だし、同時期にアジア圏でジャーロが作られてるのが面白いなって思った。他の国でもこの時期に作られてたりするのかな🤔

スタイル的にはレンツィとかよりもバーヴァやアルジェント寄り。ハット+グラサン+マスクをつけた犯人が大きなナイフを持ってターゲットを追いかけ回す。『血みどろの入江』を思わせる逃走シーンもありつつ、大勢の警察が娼館に踏み込むシーンをダイナミックなカメラ移動で捉えたり、香港映画(ショウブラザーズ製作)らしくカンフーアクション的なシーンも少し採り入れていたりとジャーロにしてはアクロバティックな印象。

中でも特異的なのはやっぱり死姦シーンで、客観視点でのウジムシだらけの腐敗した死体と犯人の主観視点での綺麗な死体を対照させて見せているのが病的なキモさを際立たせてる…😱流石に女優さんが無理だったのか全員にこういったシーンがあるわけではなく、景気の良い首チョンパや顔面グチャドロとかの通常のゴア描写も交えていて、レパートリー的な変化で飽きさせないだけでなく伏線になったりもしてた。

ジャーロは、外見では綺麗に見えるブルジョワの内面に潜む闇に切り込むことが多く、それがイタリアの綺麗な街並みと呼応するような意図を持たせているのだけど、本作では退廃的な香港のロケーションそのままに、その奥側に隠れた闇に更に踏み込むような闇→深淵的な闇の深化的な意図を持たせている。

だから本作で豪華絢爛なものはメイン舞台となる娼館のみ。娼館で女性たちを搾取する女主人と同様に、娼婦のみを狙う殺人鬼とをリンクさせ、それらを「自由」に対する障害として設定しているのは情勢を反映させた香港らしさなのでしょうね。窃視的なカメラを頻繁に用いて内側を覗き見るのはジャーロ的なカメラワークなのだけど、本作の「自由と鳥籠」的な主題をも反映しており、『サスペリア』からの影響も見えてくる。

香港産ジャーロって他にもあるのかな?アジア系のジャーロも攻めていきたい!!
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