ベビーパウダー山崎

令嬢ジョンキエール -愛と復讐の果てに-のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.5
原作がドニ・ディドロ『運命論者ジャックとその主人』、つまりブレッソン『ブローニュの森の貴婦人たち』と真っ向勝負のエマニュエル・ムレ。その志は買いたい。娼婦の娘が死なずに中年男性が真の愛情に触れ、復讐を仕掛けた中年女性の底なしの寂しさで終わる。三人のうち誰を傷つけてこの世界を閉じるか。始まったときからすでに物語が進んでいて(二人の出会いなど描かれない)、その悪意が劇的ではなく平然と流れていくのが現代的な作家の「映画」。結婚など基点となる出来事をあえて省き、会話劇で押し通すのはおそらく作家性。着火するまで時間がかかるが粘って見続ける価値は十分にある。