このレビューはネタバレを含みます
イタリア映画祭2019にて。
非常に文章で表現するのは難しい作品。
メランコリックな〝彼〟とバイタリティー溢れる〝彼女〟が共有する時間を、2人の視点から違う記憶として描いた特殊なラブストーリー。
人生は記憶の積み重ね、美しく愛おしかった思い出は時を経て、苦い思い出となり得るように人が保存する記憶なんて変容するもの。
同じ出来事も人によって捉え方が違うように人生とは儚く曖昧で無意味なものかもしれない。
自身の弱さに溺れてしまう彼と年月を重ねるごとに硬質化していく彼女。長い時間が人の視野を広げたり狭めたりする怖さを体現していた。
その中で色褪せもせず、変質もしない自分の核を見つける彼と彼女の旅を混沌にして深遠な映像美で紡ぐ。
一見すると混乱してしまうであろう物語を練りに練ったであろう脚本とプロットがしっかりと支え、全体を構築している。
2度3度と鑑賞し、色んな人と感想を話したくなる良作。
