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命みじかし、恋せよ乙女のかずシネマのレビュー・感想・評価

命みじかし、恋せよ乙女(2019年製作の映画)
3.4
【思い出して なぜ覚えてないの?
 教えて すべてはかない思い出】
この曲いいな。好き。
EDもこの曲だったけど、入月絢が作中でアカペラで歌ってた方が好き。

樹木希林の遺作。
原題は直訳で「桜と妖怪」
邦題の元となった「いのち短し 恋せよ乙女(ゴンドラの唄)」は作中で歌われる。
同じく同曲がテーマ曲だった黒澤明の「生きる」の非常に分かりやすいオマージュシーンもある。
撮影地のひとつ「茅ヶ崎館」は、小津ファンや映画監督にとっては聖地。
監督は日本映画がお好きなんやろな。
登場言語はドイツ語、英語、日本語。
オープニングとエンディングの妖怪たちの絵に何故か嬉しくなる。

主人公は夢と現を行き来している。
彼は重いアルコール依存症なので、常に酔っ払っている様な幻を見る。
そのやらかしによって、妻は出て行って子供にも思う様に会えない。
また、両親はもうおらず、兄姉との仲も悪い。
両親とは分かりあえなかった後悔が残ってしまっている。
父親は日本で仕事をしていた。
その時に父親が知り合い、交流があったのが日本人のユウ。
彼女がドイツまで主人公を訪ねて来てから話は動く。

地から足が離れかかっていた彼が「もうちょっと足掻いて頑張ってみよう」と思えるまでの話。

希林さんが登場するのは後半に入って少ししてから。
ガラッと空気が変わる。明るさが差す。
撮影は亡くなる数ヶ月前だったそうなので、身体が辛そうに映る。
だけども、浴衣の帯のシーンとかスマホを介して隣で喋る様子とかがやっぱり自然。

希林さんパートの直前の、家族とのシーンが好きだった。
殆どのシーンで画面が酔っ払っていなく、落ち着いている。
家族が集まったきっかけはとてもアレやけども…。
でも、兄貴おまえ…向き合おうと思えば向き合ってくれるんじゃん!と。
兄貴と姉貴が話すと自然と思い出話、子供の頃の話になっていたのが良かったな。
あと、ロベルト君とのくだりはどちらもすき。

テンポがとてもゆったりしていて、それでいて前半は「酔っ払い」の苦しい展開や分かりにくい展開が続くので特に少し辛い。
日本パートになってからは日本昔ばなし風味な様相で好きだった。
ペース配分やバランスが違えばもう少し観やすくなったのかもなと思わなくもない。
作品の伝えたいテーマは好き。

原題を「妖怪」とするのは少し違う気もするが(かと言って幽霊とかお化けもちょっと違うし)、他に当て嵌められる言葉もおそらく無いし、ドイツの妖怪的なもの(あのナマハゲみたいなの何?)も登場していたのでこれでええんやろな。
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