りょう

命みじかし、恋せよ乙女のりょうのネタバレレビュー・内容・結末

命みじかし、恋せよ乙女(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

同じ監督の『Hanami』(2008年)の続編です。『Hanami』と同じで、幻想的で美しい映画。この監督の特色が健在で良かった。

映画や小説が終わった後「あの人はそのあとどうなったんだろう?」と気になることがあります。実在の人物でないことが分かっていても気になるんです。『Hanami』のときは謎の「天使」の役だったユウが、そもそもどういう人で、あのあとどうなったのか、今回の映画で決着が付きました。結局、死んでしまっていたことが分かり、寂しい結末でした。

最後に、ドイツ語で「さようなら」と言いながら、主人公とユウ(死者)が別れるのが、ありきたりですが、なぐさめになります。「さようなら Auf Wiedersehen」は、「また会うときまで」という意味なので。

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以下は、ちょっとした解釈です。解釈したからといって分かったことになる訳ではありませんが . . .

『Hanami』の時は、迷える人の魂を救済する、キリスト教的な意味で、ユウは天使の役割でした。今回の原題が『桜花と悪霊たち(英 daemons, 獨 dämonen)』であるところ見ると、ユウやその他の死者たちは表向きはdaemonなんですが、実際は、破滅の縁まで行った主人公が立ち直る、きっかけや動機づけや癒やしを与える役割です。つまり、やはり、天使の働きをしています。

してみると、「daemons」で象徴されているのは、主人公の心に住み憑く daemons だったということなんでしょうか。ドイツ観光に来ていた日本人観光客が、霊に取りつかれている主人公のためにまじないをしてくれますが、それは的外れだったんでしょうし、最後に、死者のユウが主人公を海に引き込んで殺そうとしますが、主人公はそれに抵抗して助かります。あれも、生きる希望をなくしていた主人公の心の中の daemon と最終的に決別し、生きていくことをここではっきり決意したことを象徴しているのでしょう。

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余談: 日本での宣伝の仕方が、樹木希林さんを全面に押し出し、題名も『命短し . . . 』と、かなり映画の主題からずらしたものにしたのも、興業的な作戦なんでしょう。

僕が行ったときの観客は、外見で判断してはいけませんが、「この手の」映画の普段の客層とは大きく異る観客でいっぱいで、「この手の」映画がこんなに混むとは思わなかった。

別に、苦情を言っている訳で、もけなしている訳でもなく、どんなきっかけでも良いので、ひとりでも「この手の」映画に目覚める人が出てくれば嬉しいですよね。

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『Hanami』と同じ、菅野よう子さんの曲がテーマ曲になってて、映画の雰囲気に合ってて良かったです。
りょう

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