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人生は小説なりのSのレビュー・感想・評価

人生は小説なり(1983年製作の映画)
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神保町の古本まつりが数年ぶりに開催され足を運んでみたがすずらん通りにワゴンが並ぶのは29日からであった。さらに、神保町が自分にとって昔ほどワクワクする場所ではなく、どこか場違いな違和感というか、意志とは無関係に通り過ぎていく風景に感じられた。数年前の自分と今では境遇も心持ちも変わっているからだろう。というわけで、むなしさを抱いて映画館へそそくさと避難して鑑賞したのがこれ。

作中ちょくちょく「笑い」が起きたが、コメディでもブラックジョークでもなく、ツッコミのないボケ(しかもボケなのかどうかも曖昧なボケ)とちんぷんかんぷんな台詞で、喜劇とファンタジーとミュージカルを混ぜた、混沌としたユートピア世界における笑いである。マルケスの小説を、フレンチに、コミカルに、アイロニカルにしたような、なんとも表現しづらい映画。子供向けと思うひともいるかもしれない。

題名で「小説」と訳された『La vie est un roman』の「roman」だが、由来を辿ればロマンス語(ロマン諸語・ラテン語の口語)で書かれた”物語”を指しており、「roman」(仏)「romance」(英)どちらも「小説」という意味がある。
日本語で「小説」といえば自然に「国文学」「純文学」「言葉」に結びつく自分にとって、この映画は終始どこに「人生」と「小説」の要素があるんだ?と思ってたが、浪漫小説のことかと思えば腑に落ちる部分がある。
しかもなんと、英語タイトルは”Life Is a Bed of Roses”!
([Bed of Roses] 懸念のない情況、楽な地位、安心で楽しいステータス)
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