菩薩

人生は小説なりの菩薩のレビュー・感想・評価

人生は小説なり(1983年製作の映画)
4.2
オープニングクレジットに「エンキ・ビラル」の名前があって「えっ?エンキ・ビラル?」なんて思いつつ観ていたら本当にエンキ・ビラルでビビった。この映画は要するにひつまぶしである、なんて言ったら皆様を困惑させるだけであろうが、この作品を観終えた直後、場内の人々を包み込んだ感情は「困惑」以外の何物でも無いであろう。現代・過去・空想の世界がまるでチョコで言えば紗々的に絡み合い…なんて事は無く、それぞれは別個の世界軸として存在し、決して交わる事は無い(とか言いつつカブトガニのモチーフが意味深に存在していたりもする)。しかしその三層に通奏低音の様に鳴り響くテーマは「愛・幸福・理想郷」であり、結局のところ一言で語ってしまえば「理想郷は人々の想像力の中にしか存在し得ない、しかし想像力こそが地上に理想郷を建設する為の唯一の手段であり近道でもある」と言う相反する理論が敷き詰められている。米が敷き詰められているお椀が世界、鰻、かやく、出汁を加える事によって奏でられるハーモニー、移り変わって行くお口の中のユートピア、しかし一度それを投入してしまえば元には戻せず、お口の中のユートピアは永遠には続かないしそもそも高い(搾取と被搾取の関係)…と苦し紛れではあるが、これ以上書くことは無いのでこの辺りでお暇する…。一本で三本美味しい!面白かったよ!俺は好きだよ!のやつである。
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