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エンジェルサインのsingerのレビュー・感想・評価

エンジェルサイン(2019年製作の映画)
3.6
これ、不覚にも泣かされてしまいました。

いや、不覚にもって言うのが正しいのかどうかは、よくわからないんですが、
多分、今の自分の置かれている立場や、境遇。
そして、重ねてきた年月があるからこそ、許容出来た作品のような気がしました。
なんとなく今になって思うだけなのですが、昔の自分だったら、多分ここまで感動はしなかっただろうなぁ。
なんかここ最近、歳を取るごとに、自分が涙脆くなってる気がずっとしていて、そんな自分の心の変化に、ズバリと突き刺さるような作品だったなぁと思いましたね。

失った人への想いを綴った5つのエピソード。
それらは、迷いがないくらい、真っ直ぐで、悪く言えばベタベタ過ぎる位の物語だったんですが、
登場人物たちの台詞を一切廃して、映像と音楽だけで物語が綴られるだけあって、
どの作品もとても、“想いが伝わる”ものばかりでしたね。

作品と作品を繋げるメインテーマと、青く光るアゲハ蝶の演出は、
少し強引な気もしたし、アイデアが光るようなものでは無かったとは思いますが、
そういう細かい部分を度外視しても、ひとつひとつのエピソードがしっかりと自分の心に届いたので、いい作品を観たなぁという満足感はとても残りました。

個人的にはやっぱり娘たちの事を思ってしまったので、佐藤二朗の「Father’s Gift」が1番好きでしたね。
でも、松下奈緒とディーン・フジオカによるプロローグ&エピローグも結構、良かったです。

総監督は60歳にして初監督を務めたという、漫画家の北条司。
自分も「キャッツアイ」、「シティハンター」は、当時良く読んでいて、
とても魅力的な女性を描く作家さんだなぁと思っていたんですが、
この監督作でも、その延長にあるような魅力的な女性たちを見る事が出来たので、
懐かしい気分と同時に、今になって彼の作品に心を動かされるのが、なんとも嬉しいものだなぁと思いましたね。

ただ、今作。
本当に無名で、このFilmarksでも鑑賞数が異様に少ないのが本当に惜しいです。
個人的には、このまま埋もれさせるのは勿体ない位の作品なんじゃないかなぁと思うので、このレビューをきっかけに、他の映画ファンにも広がっていくといいなぁと。
そんな気持ちにさせてくれる、とても素敵な作品でした。
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