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82年生まれ、キム・ジヨンのmegurosのネタバレレビュー・内容・結末

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

妻も82年の生まれで、産後の不調に悩んでいるため急いで鑑賞。事前知識を入れていなかったので、産後精神病の一種として”祖母が憑依する”という設定に驚いた。がしかし、その設定に納得もいった。その設定によってキム•ジヨンの世代だけでなく、上の世代をも救わんとしたのではないか。

まず本作は、男性中心社会に埋め込まれている女性侮蔑的なシステム、不便を強要して何も疑問に思わない社会の精神構造、あるいはその社会のあり方を支えている女性側の共犯者の姿をも描くことで、現代の女性が向き合っている苦悩をキム•ジヨンを軸に描いている。ただ、82年生まれの、ある特定世代だけに向けられた映画ではなく、その射程はもっと大きい。キム•ジヨンの回想によって若き日の少女時代が描かれ、現在まで連綿と続き、下の世代がいま尚苦しんでいる社会の理不尽が描かれる。憑依の設定によって祖母が登場することで、キム•ジヨンの母親世代がどのような苦悩をこの国で抱えてきたかが語られる。韓国という国に生きた、幅広い世代の女性を救わんとする気概に満ちていて、原作が国民的なヒットになったというのも納得がいった。

男性たちの世代的な色彩、あるいは家庭環境における育ちの違いも面白い。父親世代の 無意識な男尊女卑的態度、そうした家庭で育ったが1つ新しい世代のコン•ユは新しい価値観を知ってはいるものの、それに踏み出せない弱さもある。一方でキム•ジヨンの弟は、お姉さん2人に囲まれて育ち、普段は頼りなさげではあるが、(父親とは異なり)姉の好きなものをしっかり覚えておくことを誓う。

社会に埋め込まれ、見えない人には全く見えなくなっているこの女性に対して侮蔑的なシステムを正すために我々はどうすればいいのか?昔よりはマシになったと、一歩一歩我慢しながら進むしかないのか?と思った時に、欧州などで取り入れられているクォータ制の導入はやはり有効なのではないかと感じた。

あと、チョン•ユミのファッションがかわいくて良かったです。役者陣も素晴らしかった。
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