"君のためと言わないで…その言葉が信じられないの"
"私の何を知ってるの?"
【STORY】
女性の生き方・夫婦の関係性が見直される傾向になってくると同時に、そう簡単に切り替わらない部分も多い現代社会。
子供のために仕事を辞めた専業主婦のジヨンと、その夫や家族を通して、過渡期とも言えるこの時代を生きる女性の姿を描く。
【一言まとめ】
●時代に挟まれた捻れた価値観
●誰が悪いとも言い切れないやるせなさ
●夫妻とお母さん役の演技が凄い
●三姉弟の関係性が凄く好き
【感想】
嫌味を垂れる何人かのモブキャラがクズなのは勿論ですが、一旦それは置いておきます。
この物語の中心人物達にメチャクチャ問題のある人間がいるかと考えると、そこまで言うほどの大問題児はいません。(息子贔屓の父親は気になりますが)
でも、会話の中にたまに出る、時代による価値観のギャップや、悪気の一切ない行動が、ジヨンに刺さっていくのもありありと感じられます。
時には、思いやりから発せられた言葉でさえも、彼女に刺さるトゲになってしまいます。
夫が妻の身体に気遣うこと。他の人が "仕事をする女性" を褒めること。仕事をしている親戚の女性が、彼女の娘にプレゼントを買って来てくれること。
一つ一つは良いことでしかない筈の事がなぜこうも彼女を追い込んでしまうのか。
原因は単純ではないでしょうが、1番言えるのはやっぱり、この "過渡期" である社会に浸透した、こんがらがった価値観のせいでしょう。
時代によって価値観が変わる際に、全人類がカチッと切り替わるわけがありません。
古い価値観の人もいれば新しい価値観の人もいて、面倒なことに "部分的に新しい価値観の人" もいます。
どんな生き方も正解とされ、どんな生き方も不正解とされ得る、この時代の捻れた価値観にボコボコにされていくジヨンと、それを心配する家族。
妻を思ってはいるが、「育児休暇を取ると自分の道が閉ざされるかも」と覚悟しなければならない夫と、それを心配する家族。
誰がどうすればいいんだよ、というこの時代のやるせなさを見事に浮き彫りにしていました。
キム夫妻と、ジヨンのお母さん役の演技が凄くよかったです。
あと三姉弟の関係性がかなり好きでした。
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観た回数:1回
直近の鑑賞:映画館(20.10.11)