けーすけ

82年生まれ、キム・ジヨンのけーすけのレビュー・感想・評価

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
3.6
2020/10/14(水) T・ジョイPRINCE 品川 シアター5 21:30回にて鑑賞。H-12。原作未読

キム・ジヨン(チョン・ユミ)は、サラリーマンの夫デヒョン(コン・ユ)と1歳半の娘と暮らしている専業主婦。家事や子育てを頑張るジヨンだったが、実は彼女は突然に別人格が憑依するという精神的な病を抱えていた。しかし、ジヨン本人はそのことは自覚しておらず、元に戻った後に憑依があった時のことは全く覚えていなかった。
そんなジヨンを心配するデヒョンはジヨンに内緒で精神科の先生に相談をする事に。デヒョンは、もしジヨンの症状を本人に伝えると彼女が傷ついてしまうことを恐れ、ジヨンが精神的な負担を受けないよう気遣う日々。そんな夫に対して、ジヨンは大丈夫だと言い続けるが・・・







男女平等が多くの国で叫ばれるようになり時代が変わったとはいえ、まだまだ女性が生きづらい世の中という部分を切り取っていました。

家電や様々なサービスで生活が便利になっても育児家事は大変な事ばかり。昔は根性論でそれが当たり前で常識とされてきて、その当時の思考のままの親世代や、そういった思考で育てられてきた人がまだまだいるのだな、と。

ジヨンの旦那の実家では義母が「妻が家事を全てするのは当然!旦那をもっと立てなさい」とギンギンに圧力を与えてくるという価値観の押し付け。そりゃ精神も病むよね、という感じ。



旦那もモラハラ男ではないし基本は優しい夫として描かれるけど、気遣う言葉をかけたり育児をちょっと手伝う描写が「果たしてそれが本当に妻にとって助けになっているのだろうか」とも問いかけてこられた気がします。
かえってそういった事が妻にとってプレッシャーになる事もあるのかな、、、と。

“相手に寄り添う”って言葉にすれば簡単だけど、それっぽい行動をしても相手にとっては“小さな親切、大きなお世話”になってしまう事もあるのでしょうね…。


この世には「察しろ」っていう言葉もあるけど、夫婦は元々他人なんだから基本的に言わずに通じるなんて困難で、お互い本音で話し合わないとダメなんだろうなと思わせられた作りでした。


コン・ユ演じた旦那の役柄は観る側が既婚か未婚かや、子供の有無などによって見方がガラっと変わりそうな印象でもありますね。



調べたところ原作では、幼い娘の母であるキム・ジヨン(1982年生まれの韓国人女性の中で、最も多い名前との事)の生い立ちを、ある男性精神科医のリポート形式で追いかける物語らしい。圧倒的な男性優位の韓国社会において、女性がいかに社会的不利益を受けているかを描いた内容との事。
ただ、映画化された本作では原作よりは結構マイルドに描かれているのでは?という印象を受けました。


「34歳(小説刊行の2016年計算)のキム・ジヨン」ではなく「82年生まれ」としたことで2010年代半ば~2020年の韓国社会時勢に歴史的意味合いとして刻み込んだのだと感じた次第。
もちろん隣国日本においても似た部分があり、同じような経験のある女性に刺さるでしょうし、男性にとっても考えさせられる事が多々ある映画かと思います。


[2020-157]
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