MidoriK

82年生まれ、キム・ジヨンのMidoriKのネタバレレビュー・内容・結末

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

原作を読まないまま鑑賞しました。
男女問わず色んな世代に観て欲しいです。

お風呂の水をゆっくりゆっくり溜めていくように、色んなところから水が出てきてゆっくりゆっくりジヨンが壊れていく感じだった。

夫は頑張ったと思う。でもそれはジヨンが壊れてから。その前は、ジヨンがやって欲しいような事をやってくれなかったのかな(映画ではそこまで描かれていない)。
でもそれは夫の性格が悪いとか、相性が悪いからではなく、ジヨンが生まれる前からあった「女性の扱われ方見られ方(存在の見方)」が影響しているのが徐々に分かってくる。

母になったジヨンは、キムジヨン個人としての自分の人生も考えたいのに、世間が作り出した「女性」という考え方や見られ方にとらわれ、邪魔されていく。
彼女がずっと着ているタートルネックも相まって息苦しい。
色んな歪みに心を削られていくジヨンが苦しかった。

お母さんが訪ねて症状が出たとき、お母さんの立場に立って観るといたたまれなくて、ずっと泣いてしまった。
あれはとても良いシーンでした。

家族は誰も悪い人じゃない。バス停に迎えに行った父親のセリフもある意味心配してなんだと思う。
だけど何処かずれている。
ジヨンもモヤモヤしたけど、はっきりと異を唱えないままだった。ジヨンの姉だったら言うだろうけど。
何がモヤモヤするのか、分からないくらいに根深い問題なんだと思う。

カフェや会社で女性像や扱われ方が描かれるけど、とてもモヤモヤした。
同時に男性も育児休暇の件などで描かれていた。
どちらか一方だけが悪いと言うことじゃない。

昼間のカフェとかにいても、ジヨンの顔は暗い。あえてライティングをそうして心の中を映し出しているように見えた。
だけど最後、カウンセラーがブラインドを開けて光を差して、今度は彼女の顔だけ光が当たってた。良い傾向だと思った。

終盤の雪の日の親子の電話も、母娘の服装がどことなく似てたのも何かあるのかな。

はっきりした処方箋などないのかもしれない。
でも健康でいて欲しい。心も体も。
ジヨンも家族も私たちも。

春が来て、彼女の服は白のタートルネックから首もとが開いた白のニットになっていた。
きっと良い傾向なんだと思う。
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