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脂肪の塊のeyeのネタバレレビュー・内容・結末

脂肪の塊(2017年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

"脂肪の塊" (2017)

これが自主製作映画...汗

テーマにしても
クオリティにしても
圧巻で圧倒

"戦慄のダークファンタジー"
と謳われていた作品

事前にストーリーや予告編から
それぞれのキャラクターの心像や
残酷さに興味をそそられ鑑賞した

ストーリーは
第一幕-第四幕仕立て

レズビアンの花子が夢に見続ける
"青いバケツ"に怯える

それに近づくと赤い何かが
ポタポタと地面に滴ってる

そして青いバケツによって
徐々に精神を蝕ばまれていく

友人 ユキ
殺人鬼 野村
カトリック信者根岸

"自己肯定感の低さ"
"承認欲求の低さ"を含め
それぞれのキャラクターの
欲望や特徴を見せていき

ストーリー中の
時間軸を崩壊させる
表現も用いてる

夢の中では主人公 花子の
髪がロングで服が黒い

対して日常では
花柄のワンピースで
ショートボブで映し出される

色彩のコントラストによって
現実・非現実を分けていく

その一方でどこからが
今なのかは分からない

レズビアン同士の性描写も
絵画的な美しさを映し出してる

花子はある強烈な出来事

"野村を殺害してバラした"
ことで人格に解離が起きてくる

青いバケツは
"記憶のメタファー"
でフタがされている

それ固く閉ざされてはおらず
片鱗が見えている

目の前から消したはずが
何故かいつも隣にい続ける

バラバラなイメージで
統合された結晶が肉体ならば
焼こうが埋めようが

"感情と記憶に支配される"以上
それは処理できない

日常・非日常
表情・無表情
愛情・憎悪
快・不快
光・影
正気・狂気

これらは劇場中で
対比されているが
決して裏側にあるのではなく
その延長線上にある

『死は生の対極としてではなく
その一部として存在している』

この言葉は
"ノルウェイの森"
(著 村上春樹)
で描かれている

ワタナベがキズキを亡くした
あとに感じる
喪失感から発する言葉

鑑賞後終わったあとに
概念としてリンクしてると感じた

精神病理観点では
記憶喪失・PTSD・強迫神経症
同性愛・ストーカー・自傷行為
殺人鬼...etc.

また切断した遺体の一部を食する
カニバリズムも描かれてる

劇中、憎むべき汚い悪魔である
野村を殺せなかった根岸にとって
カニバリズムをすることは
ある種 "喜びの倒錯"でもある

だから自慰行為をするが
その罪に苛まれ
自分を憎んで腹を切る

そこには快楽・苦痛が描かれる

野村の彼女が根岸に
レイプされるシーン

途中から根岸を誘惑するような
描写が入り混じるところで

『現実を曖昧化させる夢』

「これは何かで…
観たことがあるような…」
と感じていたが

これはDavid Lynchの
マルホランド・ドライブ(2001年)
に影響を受けたとのこと

そう言われてみればそうだな
と妙に納得してしまう

それぞれのキャラクターの
"自己肯定感の低さ
承認欲求の低さ"
など色々な問題点を重ね合わせる

自身の過去と向き合うときに
初めて時間が動きだす

精神病理の描写が素晴らしく
孤独さや残酷さ、色彩鮮やかな
ところにも注目できる映画
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