Pulitan

ワイルド・ライフのPulitanのレビュー・感想・評価

ワイルド・ライフ(2014年製作の映画)
4.3
2014年フランス、セドリック・カーン監督。第27回東京国際映画祭参加作品。

フランス北部、トレーラーハウスで半放浪生活を送るパコとノラ夫婦と息子のトマ、ツァリ、オケサ。
2人が出会った頃は自然の中で子供を育てながら生活をしたい、と希望していた母親のノラであったが、子供が成長すると共に、普通の家に住み、普通に学校に通わせての教育……と、変化してきた。
そこで、パコが出かけた隙に子供3人を連れて、家を出る、という、強行策に出ての離婚……子供の意思とは無関係に親権を手にしてパコから遠ざけようとする。
子供たちにとっては、大切な存在である父親との突然の別離……

父親は子供の面会できる権利を使って1週間、子供たちと過ごすことにする。が、長男のトマは本当の子供ではないので行かない(本当はパコが好きだが……)とノラの元に残る選択をする。

その時、ツァリとオケサは8歳と7歳……
元々1週間のつもりではなかったパコは、身分を隠して嘘をつき、警察を避けて10年間2人の子供と共に逃亡生活を続ける。
息子は自然の中で素直にまっすぐ育ち、成長していき、思春期を迎える。
ツァリは恋もするが、パコには歓迎される出来事ではない。パコは自然の中で色々教えてくれる魅力的な存在であると共に、封建的で絶対的な存在であるかのように振舞い、2人の子供たちを自分の価値観の中で育てようとする。文明の力を否定的に捉えて耳を貸さない。
ついには、ツァリは独立したいと考え始め、オケサもまた2人のやりとりを見ながら行く方向を模索する……

そんな中で、ついに警察に見つかることになりパコが捕らえられる。

そして二人が取った行動は……


実話に基づくこの映画は、誰が悪い、誰が不幸だ……ということはなく、犠牲になったものも、かわいそうに思うこともなく、とても自然体の素晴らしい表現がされている。
ノラのことも、パコのことも恨むことなく、親や自らを卑下することもなく、非常に素直な目を持って成長した息子達にただただ感動して、涙してしまった……
ノラに対して話したオケサの言葉がとても印象的でいつまでも心に余韻と温かいものが残った。

映画の挿入音楽のピアノ曲も旋律がショパンを思わせるような美しいものであった。
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