かとぅーらす

紅い服の少女 第一章 神隠しのかとぅーらすのレビュー・感想・評価

4.0
面白かった!
魔神仔って日本でも全然いそうだもん。こういう妖怪いるでしょ、全然。めちゃくちゃ考察しまくりながら見れて、脳汁全開キマりながらの終始で、めっちゃ楽しかった。

★魔神仔についての考察と解釈★
・山で名前を呼ばれ振り返ると取り憑かれ引き込まれ取り込まれる。
・条件を満たした場合に発動できる限定能力だから強い。実に妖怪っぽい能力で説得力がある。
・街に降りてこられる上に山以外でも能力が発動できるのは制約を超えた理不尽さで、場所を無制限としてしまうとリソース的にも条件的にも収支が合わない。
・敷衍して考える。『山』で『名前を呼ばれ』『振り返る』とは『霊力を十全に行使できるテリトリー内』で『認識する』『認識させる』行為である。この流れで条件を満たすことで対象に畏れを付与することができ、その畏れによって対象を支配している。
・記憶や記録もポータルとして出入りできるのか? 山以外での現出は、山という神域に最初からある畏れを補うだけの効果はあり、能力発動条件の畏れを満たすには十分だろう。だが、そこに至る以前に、ポータルの利用という別個の能力についてはリソースが不足している。
・いち妖怪ではなく、山神や土地神そのものだとすると格位は合う。山神と同一であり、その手足となる子端末なのだろう。複数能力を操るだけの位は合うが、依然としてリソースは足りない。
・『伐採された木の魂を植える』とは、死んだ肉体とは別に魂があるという、マテリアルボディとアストラルボディの独立性を示唆している。また、木を殺す、とは、山神の体の一部を破壊すると同義であり、山神に対する明確な敵対行為であり、(無意識であろうと)強い悪意と害意がそこにはある。
・悪意と害意を受け肉体の欠損を負わされた、という怒りや恨みは敵対者へ復讐するためのリソースと成り得る。また、山神の所有する山の中の魂が肉体から解き放たれたとき、それを差配する権能も山神は所有していると考えるのが妥当である。
・前項の二点を以て、マーキングによりポータルを作り敵対者の元へ現出する能力、とは、敵対者への復讐として敵対者に山の魂を植え込み支配下に置き山の欠損を補完する能力、と考えることができ、収支が釣り合ってくる。
・魔神仔とは、本来は、不敬な闖入者への警告だが、神の怒りに触れた人間に対しては防ぐ術のない矛となる。
・魔神仔の実体はクロメンガタスズメを媒介し山神の意志の執行するために受肉した道具であり器官である。

能力バトル大好きな身としてはこういう考察も大好きなんだよね。そして、ホラーの流儀をきちんと守りこのへんは作中では全く説明していない。超越的存在を感じるような理不尽さは怖さや畏さに直結するから活かしてほしいけど、能力のシステムとしての理不尽さや矛盾があると引っかかっちゃうから、とてもいい塩梅だった。
もちろん、こういう設定だけではなく、ストーリー的にも納得。私はおばあちゃんとの関係性とかストレートな愛情表現とかに弱いんだよな。特にこのおばあちゃんは私の母に若干似てて感情がより入ってしまった。主人公のキャラ造詣やそれを演じる役者の熱演も良かった。それらを総合して描き上げたラストシーンも大好き。
羊たちの沈黙が大好きな私的にクロメンガタスズメが出てきたのもテンション爆上がりだったし、小さな要素一つとっても全般的に私の嗜好にとてもよくハマるナイスホラーだった。
世間で言われてる通りに台湾ホラーが今アツい!